樋口泰人+降矢聡トークイベント
登壇者 樋口泰人、降矢聡
爆音映画祭主宰・樋口泰人と日本未公開映画の紹介、上映を企画・運営する団体「Gucchi's Free School(グッチーズ・フリースクール)」主宰・降矢聡によるトークイベントです。「YCAM爆音映画祭2020」に関連して開催します。
このトークイベントでは、「YCAM爆音映画祭2020」でも上映する『Mid90s ミッドナインティーズ』『ミッドサマー』『WAVES/ウェイブス』といった数々の話題作を発表し、ハリウッドに新風を吹き込む映画制作会社「スタジオA24」などについて話します。
爆音映画祭主宰・樋口泰人によるコメント
アメリカの映画製作スタジオ、A24の名前を初めて目にしたのは『スプリング・ブレイカーズ』のときだったか。ハーモニー・コリンでないと描けない空虚かつゴージャスな荒んだアメリカの暴れっぷりに心を撃たれたのを憶えている。おそらくそれと前後して観たソフィア・コッポラの『ブリング・リング』にも漂う、911以降のアメリカをぼんやりとそれを包み込んで逃がさない穏やかなニヒリズムと言ったらいいか、「ノーフューチャー」という言葉さえもロマンティックに聞こえてしまう行き詰まり感を忘れることはできない。
爆音映画祭ではその後、『ムーンライト』『20センチュリー・ウーマン』『ア・ゴースト・ストーリー』『パーティで女の子に話しかけるには』『ヘレディタリー/継承』『アンダー・ザ・シルヴァーレイク』『ミッドサマー』などを上映してきた。特にA24を意識したわけではないのだが、それらはどれもハリウッド・メジャーが取り逃がしてきたテーマを取り上げ、新しい製作手法によって、当たりまえのようにアメリカの現在を描いて見せたのだった。爆音上映されなかった作品でも、『複製された男』『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』『白い沈黙』『ヤング・アダルト・ニューヨーク』『AMY エイミー』『追憶の森』『フロリダ・プロジェクト』『レディ・バード』『ラスト・ムービースター』『魂のゆくえ』『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』『SKIN/スキン』『オン・ザ・ロック』などが並ぶ。映画好きなら誰もが心ときめくラインナップと言っていい。
コロナ禍においてハリウッド・メジャーの動きが停滞する中、小規模作品ではあるもののこの豊かな作品の群れは確実に今のアメリカ映画に太い道を作り出している。まさに社名の由来通りの高速道路(イタリアの真ん中を横断する「アウストラーダA24」という高速道路)を、設立後10年も経たずに建設したのだと言えるだろう。いったいそれはどんな土壌から生まれたのか、それぞれの小さな作品の群れは何をわれわれにささやきかけているのか。
今回のYCAM爆音映画祭では『Mid90s ミッドナインティーズ』『ミッドサマー』『WAVES/ウェイブス』の3本を取り上げて、それぞれの作品についてはもちろん、それらが相互に関係しあいながら作り上げるA24が示す「アメリカ」を語れたらと思う。ゲストにはアメリカ映画を新しい言葉で語りなおす本『USムービー・ホットサンド』の編集や、今年はケリー・ライカートの特集上映が記憶に新しいグッチーズ・フリースクールの教頭、降矢聡さんを迎えてわれわれも新たな高速道路の建設のための第一歩を踏み出すことにする。
プロフィール
登壇者
樋口泰人
映画批評家、ロック評論家
ビデオ、単行本、CDなどを製作・発売するレーベル「boid」を98年に設立。04年から、東京・吉祥寺バウスシアターにて、音楽用のライヴ音響システムを使用しての爆音上映シリーズを企画。08年より「爆音映画祭」を開始。批評集『映画は爆音でささやく』(boid)も発売中。
降矢聡
Gucchi's Free School/映画配給
映画上映団体グッチーズ・フリースクール主宰、『ムービーマヨネーズ』企画・編集。「DVD&動画配信でーた」にて、コラムを連載中。編著に『USムービー・ホットサンド 2010年代アメリカ映画ガイド』(フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』、『映画監督、北野武。』(ともにフィルムアート社)、『映画空間400選』(INAX出版)。そのほか、映画雑誌やプログラム等に映画評を執筆している。
参加費
- 参加無料
基本情報
開催日時 |
2020年12月5日(土) |
会場 | |
関連上映 | 1上映プログラム |
参加費 | 参加無料 |