黒澤明—生きるシナリオ

それまで無気力に生きてきた一人の役人が、死という絶対的なものを目前にして、 自分を見つめ直し、人間としての尊厳をとりもどしていく姿を描く。 胃癌であると知った男は、夜の街をさまよっては見知らぬ男と暴飲に明け暮れるが、部下の言葉により生き方を変えはじめる。 黒澤 明と脚本家の小國英雄が初めて組んだ作品でもある。2022年にはイギリスの国民的俳優ビ ル・ナイ主演でリメイクされ、今年3月、日本公開され話題となった。

ダシール・ハメットのハードボイルド小説『血の収穫』を大胆に翻案、西部劇の手法を取り入れながら、三船敏郎演じる浪人の痛快無比な姿を描いた大ヒット時代劇。 撮影は、東宝撮影所横の農地に巨大なオープンセットを建てて行われた。 黒澤は翌年、続篇となる『椿三十郎』を発表。 海外でも評判 を呼び、黒澤は世界のKUROSAWAの位置を不動のものにした。「キネマ旬報」ベストテン第2位。

戦国時代、隣国との戦いに敗れた秋月家の侍大将（三船敏郎）は、同盟国に脱出するため、 敵中突破を図ろうとしていた。二人の百姓を狂言まわしに使い、 お家再興にまつわる宝探し、敵中横断にともなう追っかけなどを盛り込んだ作品。 襲いかかるさまざまな難関、手に汗握るスリリングな場面が連続する。 そのようなシチュエーションをいかに面白く組み立てるかに三人の脚本家と黒澤明は大いに知恵を絞ったという。

アメリカの推理作家エド・マクベインの 「キングの身代金」を映画化。 ほとんどのトリックは黒澤をはじめとする脚本家たちのアイディアで製作された。『用心棒』（1961）や 『椿三十郎』（1962）で、これまでの時代劇にはなかった迫力を演出した黒澤が、本作品でも、サスペンス映画に斬新な演出を試みている。 文学座の新人俳優だった山崎努は、〈天国〉に住む富豪と対照的に〈地獄〉に 住む青年医師を演じ、一躍注目を浴びた。