令和4年度優秀映画鑑賞推進事業
35mmフィルムで観る映画黄金期 成瀬巳喜男と木下恵介
国立映画アーカイブでは、広く国民の皆様に優れた日本映画を鑑賞していただくとともに、映画保存への理解を深めていただくことを目的に、平成元年度から「優秀映画鑑賞推進事業」を実施しております。本事業では、昭和11年から平成23年にかけて製作された日本映画の中から、映画史を代表する作品や多くの国民より好評を得た作品を選んで、国立映画アーカイブ所蔵の35mmフィルムにて、全国各地で上映いたします。
本年度YCAMでは、昭和20~30年代の日本映画黄金期に活躍した、成瀬巳喜男監督と木下惠介監督の作品を上映いたします。男⼥の⼼のあやを冷徹な視線で描写した成瀬巳喜男監督作品からは、代表作「めし」、下関出身・田中絹代主演「流れる」。そして、叙情的な作風で多くの観客を魅了した木下惠介監督作品からは国民的大ヒット作「二十四の瞳」、伊藤左千夫の小説「野菊の墓」の初映像化「野菊の如き君なりき」。今もなお世界から注目される永遠の名作を35mmフィルムでお楽しみください。
上映作品4作品
作品上映
二十四の瞳
作品上映
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二十四の瞳
壷井栄が1952年に発表した児童小説を、当時気鋭の中堅監督であった木下惠介が脚色・監督した作品。小豆島の豊かな自然を背景に、戦争をはさんだ激動の時代を、小学校の教師とその教え子たちの成長を通して描き、国民的大ヒットとなった感動大作である。風光明媚な島の自然をとらえるために長期にわたるロケーションが行われたのはもちろんだが、セット撮影であることを感じさせず、「自然のように」見せる配慮が画面の隅々まで行き届いていることも見逃せない。小学唱歌のみを用いた音楽も特徴的である。木下はこの作品の成功で、一般には叙情派監督として大きく印象づけられることになった。冒頭の場面と同じく再び自転車に乗って、岬の分教場に向かう主人公、大石先生を小さく映し出すラストシーンには、毫も変わらぬ自然、その中を点景のごとく生きていく人間、そして人間の営みに対する木下の思想が集約されている。「キネマ旬報」第1位をはじめ、この年の映画賞を独占した。
原作:壷井栄 脚色・監督:木下惠介 撮影:楠田浩之 照明:豊島良三 録音:大野久男
音楽:木下忠司 美術:中村公彦
出演:高峰秀子、月丘夢路、小林トシ子、井川邦子、田村高広、笠智衆、夏川静江、浦辺粂子、清川虹子、浪花千栄子、明石潮
1954年/155分/白黒/スタンダード/モノラル/松竹
作品上映
野菊の如き君なりき
作品上映
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野菊の如き君なりき
原作は、明治の歌壇で正岡子規に師事した著名な歌人、伊藤左千夫の小説「野菊の墓」。数十年ぶりに故郷を訪れた老人の追想が、信州の美しい自然を背景に回想形式で描かれる。旧家に育った少年と、2歳年上のいとこの少女との淡い恋愛が、古い道徳観に縛られる大人たちによってとがめられ、二人は離ればなれにされたうえ、少女は嫁ぎ先で少年の手紙を握りしめて死んでしまう。その思い出を回想する場面で、木下監督は、スタンダード・サイズの画面を白地の楕円形で囲むという大胆な表現形式を採用し、シネマスコープならぬ「たまごスコープ」と称されて話題となった。この作品では、木下の叙情性がストレートに表現されているとともに、詠嘆的美しさとしての完成度が感じられるものとなっている。主人公に起用された有田紀子と田中晋二は無名の新人で、演出意図に沿った初々しさを充分に発揮している。「キネマ旬報」ベストテン第3位。
原作:伊藤左千夫 脚色・監督:木下惠介 撮影:楠田浩之 照明:豊島良三 録音:大野久男
音楽:木下忠司 美術:伊藤熹朔
1955年/92分/白黒/スタンダード/モノラル/松竹
出演:有田紀子、田中晋、二笠智衆、田村高広、小林トシ子、杉村春子、雪代敬子、山本和子、浦辺粂子、松本克平、小林十九二
作品上映
流れる
作品上映
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流れる
隅田川畔の花柳界・柳橋を舞台に、置屋の女中として雇われた女の眼を通して、零落する花街の姿を描いた幸田文の同名小説を、田中澄江、井出俊郎による脚色により成瀬巳喜男が映画化。前年『浮雲』にてベストワン監督となった成瀬が、当代を彩る女優陣の火花散る競演を得て、芸者として生きるさだめを抱えた女たちのけなげさやエゴを存分に引き出し、代表作の一つとした。置屋の女将を務めながら男への未練を断ち切れない山田五十鈴演じるつた奴に、彼女を芸者として鍛え上げた地元有力者の女将お浜が絡む場面は、原作にはあまり描かれていないが、成瀬に請われ18年ぶりの銀幕復帰となった栗島すみ子による、やさしさと冷徹さを兼ね備えた存在感により、スリリングな緊張感をもたらしている。また、つた奴の娘・勝代を演じた高峰秀子、老齢にかかった芸者のアクを見せた杉村春子とともに、映画全体の距離感を作り出した女中役・梨花(お春)の田中絹代の演技も見逃せない。女優たちの艶とケレン味が、座敷の場面を一つも描かずして、セットと実景を見事に結合させた空間構成のなかから引き出され、現実の変化とともに確実に失われつつある時代への郷愁を、艶やかなモノクロームの画面に見事に定着させている。「キネマ旬報」ベストテン第8位
1956年/116分/白黒/スタンダード/モノラル/東宝
原作:幸田文 脚色:田中澄江、井手俊郎 監督:成瀬巳喜男
撮影:玉井正夫 照明:石井長四郎 録音:三上長七郎音楽:斎藤一郎 美術:中古智
出演:田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子、杉村春子、栗島すみ子、中北千枝子、賀原夏子、宮口精二、加東大介、仲谷昇
作品上映
めし
作品上映
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めし
黒澤、溝口、小津に続く〈日本の四番目の巨匠〉として、今や世界中の映画批評家から熱い視線を受けるに至った成瀬巳喜男監督の代表作に数えられる作品。監督を〈世界のナルセ〉の地位に押し上げるに功のあったアメリカの映画批評家オーディ・ボックなどは、本作を成瀬作品のなかでもっとも好きな作品と語っている。結婚生活も5年が過ぎ、倦怠期を迎え始めた夫婦。そこに突然、夫の姪が転がり込んできたことから、単調だった二人の暮らしに思いもよらぬ波乱が生じはじめる。美男美女の主演二人が、本作ではともに中年にさしかかり、平凡で退屈な男と所帯やつれした女になったさまを、見事に好演している。原作は林芙美子による未完の新聞連載小説。その結末を含め、脚色を委ねられた田中澄江と井手俊郎の良質な叙情と煥発する才気とが美しく調和し、繊細極まりない成瀬の演出と玉井正夫の撮影のなかに開花している。「キネマ旬報」ベストテン第2位。
1951年/97分/白黒/スタンダード/モノラル/東宝
原作:林芙美子 監修:川端康成 脚色:井手俊郎、田中澄江 監督:成瀬巳喜男 撮影:玉井正夫 音楽:早坂文雄 美術:中古智
出演:上原謙、原節子。島崎雪子、杉葉子、風見章子、杉村春子、花井蘭子、二本柳寛、小林桂樹、大泉滉、山村聡、中北千枝子、浦辺粂子、滝花久子
上映/イベントスケジュール
上映期間:2022年11月17日(木)〜20日(日)
日付 | 時間 |
上映作品 イベント |
11月17日(木) | 10:30〜12:10 |
めし |
11月17日(木) | 12:40〜14:40 |
流れる |
11月18日(金) | 10:30〜12:05 |
野菊の如き君なりき |
11月18日(金) | 12:35〜15:10 |
二十四の瞳 |
11月19日(土) | 10:30〜12:30 |
流れる |
11月19日(土) | 13:00〜14:40 |
めし |
11月19日(土) | 14:50〜16:10 |
サンカクトーク 関連イベント |
11月20日(日) | 10:30〜13:05 |
二十四の瞳 |
11月20日(日) | 13:10〜14:10 |
35mmフィルムを楽しむ 関連イベント |
11月20日(日) | 14:40〜16:15 |
野菊の如き君なりき |
作品が見つかりませんでした。 |
チケット情報
料金
料金
- 一律
- 500円
備考
チケットは当日券のみ。館内2階・スタジオC受付にてご購入ください。
特別割引は、シニア(65歳以上)と障がい者および同行の介護者が対象となります。
基本情報
上映期間 |
2022年11月17日(木)〜20日(日) |
上映作品 | 4作品 |
関連イベント | 2イベント |
チケット情報 | 有料 |
クレジット |
主催:公益財団法人山口市文化振興財団、国立映画アーカイブ |