映画監督・降旗康男　終着駅までの軌跡

家出少女のヨーコは歌舞伎町で風俗嬢のハルミと知り合い、彼女のたまり場であるジャズクラブに入る。そこには睡眠薬を飲み、ジャズに酔いしれ青春を費やす仲間たちがいた。いつしかヨーコは映画で見た南フランスへ行くことを夢見るようになる。新聞連載された実話を映画化した監督デビュー作。

四国松川刑務所の作業場建設のために全国各地から模範囚が集められ、それを温かく迎えたのが、大規模な造船所をもつ坪島社長だった。模範囚に仕立てられて網走刑務所からここへ厄介払いされた末広勝治は、坪島造船所を乗っ取ろうとする卑劣な一派を叩き潰すため、仲間を引き連れ男の戦いを繰り広げる！

長崎の競艇場の利権をめぐって、新旧の勢力である山崎組と権藤組が争う中で、競艇の八百長騒動が起きる。父親代わりの親分のために、山崎組の滝田は原爆症の身を押して戦うのだったー。荒々しい闘争の中で清純な恋を絡ませた、降旗康男監督のデビュー2作目。

漁師として働く修治は15年前に大阪でのヤクザ暮らしから足を洗い、妻と妻の母、３人の子供と一緒に静かな生活を送っているが、過去の名残りは背中一面の夜叉の入れ墨だった。ある日大阪からきた妖しい美しさを持つ螢子と出会ったことで、修治の過去が街中に知れ渡って…。平凡な男の隠された過去と揺れ動く愛を描く。

廃線間近となった北海道のローカル線・幌舞線の終着駅で駅長を務める佐藤乙松は今年で定年を迎える。幼い一人娘を亡くした日も、愛する妻を亡くした日も、乙松は休むことなく駅に立ち続けた。そんな彼の前にひとりの少女が現れ、亡き娘の面影を重ねる乙松だったが・・・。直木賞を受賞した浅田次郎の短編小説を実写映画化。

開拓期の北海道・札幌。馬市の利権をめぐって殺された博労総代である父の遺言で、一人娘・雪が九州からやってくる。雪は父の跡を継ぐ決意をするが、利権の独占を狙う敵対組織に牧場は襲撃されるー。無法者と開拓民たちの対立と闘いを描いた時代劇アクション。ウエスタンのテイストを混ぜ込んだユニークな演出にも注目。

中小企業社長の門倉と安月給のサラリーマンの水田は性格も境遇も対照的だが友情で結ばれていた。しかし門倉は水田の妻・たみのことを密かに思い続けていて…。向田邦子の同名小説を映画化。昭和初期の東京山の手を舞台に2人の男と1人の女が織りなす微妙で不思議な関係を描いた名作。

北海道・函館。脱サラして小さなもつ焼き屋「兆治」を営む英治と妻・茂子。店は繁盛し平凡ながらも幸せな日々を送っていた英治の前に、かつての恋人・さよが現れた。英治が忘れられないさよは、やがてすさんだ生活に身をゆだねていく…。初恋を忘れられずすれ違う男女の想いと、居酒屋に集まる人々の人間模様を描く。

関東の暴力団幹部・加納は、関西の暴力団に寝返った男を殺害。男の３歳の一人娘・洋子を舎弟に託して服役した加納は、ブラジルにいる伯父と偽り、洋子と文通を続け成長を見守っていた。やがて１５年の服役を終え出所した彼は、組結成の話も断り堅気になろうと決心するが・・・。義理によって再び闘争に巻き込まれる男の悲哀を描く。

鹿児島・知覧。小さな港町で養殖を生業とする山岡は、肝臓を患い透析を続ける妻・知子と静かに暮らしている。時代が“平成”に変わったある日、山岡はかつての仲間が雪山で自殺したことを知り愕然とする。二人は共に特攻隊の生き残りだった。激動の昭和を生き抜いた夫婦が、戦争の傷跡を内に抱えて生きる愛の物語。

射撃選手としてオリンピック出場が決まっていながらも果たせなかった刑事・三上。たった一度の過ちを犯してしまった妻、連続通り魔の容疑者を兄に持ってしまったすず、そして三上が立ち寄った居酒屋の女将・桐子…。一人の刑事のおよそ11年に及ぶ人生模様と３人の女性との宿命的出会いと別れを描いた人間ドラマ。