優秀映画鑑賞推進事業
おんなのゲキジョウ
国立映画アーカイブでは、広く国民の皆様に優れた日本映画を鑑賞していただくとともに、映画保存への理解を深めていただくことを目的に、平成元(1989)年度から「優秀映画鑑賞推進事業」を実施しております。本事業では、昭和11(1936)年から平成5(1993)年にかけて製作された日本映画の中から、映画史を代表する作品や多くの国民より好評を得た作品を選んで、国立映画アーカイブ所蔵の35mmフィルムにて、全国各地で上映いたします。
本年度YCAMでは、昭和の大女優となった山本富士子、岸惠子、佐久間良子、岩下志麻らの若き姿を、文芸ものや時代ものを通して紹介いたします。ときに、スキャンダラスでありながらも、誇り高き女たちを演じる女優陣。スクリーンから漂よう芳(かおり)に酔いしれる4作品です。
上映作品4作品
作品上映
五番町夕霧楼
作品上映
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五番町夕霧楼
田坂具隆監督は戦前からのキャリアをもつ名匠の一人であり、『路傍の石』、『五人の斥候兵』(ともに1938)などの名作で広く知られている。地味ではあるが、堅実な作風はかねてから定評のあるところであるが、この作品においてもその長所を随所で認めることができるだろう。遊郭の佇まいや内部の造りなど、物語の背景に対して、田坂監督ならではの配慮がなされており、表現に厚みをくわえている点も見逃すことはできない。脚本家の鈴木尚之によれば、旦那と恋人のあいだで揺れる女の身体と心を描く官能的な場面の演出に先立ち、田坂は主演の佐久間良子に丁寧なメモ書きを与え、長く対話することで主人公の気持ちをすくいあげた演技指導をしたという。善良な遊郭の女将や娼妓といった設定は、この場合、意図的なものであり、そのことによって主人公・夕子の薄幸がより純粋に、観客に印象づけられるといえるだろう。「キネマ旬報」ベストテン第3位。田坂には同じ水上勉原作の映画化作品に『湖(うみ)の琴』(1966)がある。
1963年/137分/シネマスコープ/モノラル/東映(京都)
原作:水上勉
監督:田坂具隆
脚本:田坂具隆、鈴木尚之
撮影:飯村雅彦
音楽:佐藤勝
美術:森幹男
出演:佐久間良子、河原崎長一郎、木暮実千代、進藤英太郎、宮口精二、丹阿弥谷津子、岩崎加根子、千秋実、岸輝子、千田是也、赤木春恵
作品上映
五瓣の椿
作品上映
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五瓣の椿
山本周五郎の同名小説を井手雅人が脚色し、川又昂が撮影、野村芳太郎が監督にあたった文芸大作。父の恨みを晴らすために、好色な母と関係した男達を誘惑し、一人ずつ殺害していく娘おしのの復讐を描く。その男たちは、三味線引きの蝶太夫、婦人科医、札差屋の伜、芝居茶屋の出方、袋問屋の主人とさまざまだが、死体の傍らにはつねに一輪の椿が残されていた。この陰惨な物語を、岩下志麻は内に気丈さと気品を湛えた演技で好演し、代表作の一つとした。また、この作品の場合、松竹映画を支えてきた技術陣の力も見逃すことはできない。とくに、主人公の心理描写に赤、白、黒の色彩を効果的かつ象徴的に用いた独自の撮影は、川又昂カメラマンの力量を発揮したものであった。
1964年/163分/カラー/シネマスコープ/モノラル松竹(大船)
原作:山本周五郎
監督:野村芳太郎
脚色:井手雅人
撮影:川又昂
音楽:芥川也寸志
美術:松山崇、梅田千代夫
出演者:岩下志麻、田村高広、伊藤雄之助、加藤嘉、左幸子、入川保則、加藤剛、小沢昭一、西村晃、岡田英次、山岡久乃
作品上映
夜の河
作品上映
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夜の河
吉村公三郎監督はすでに戦前の名作『暖流』(1939)で、従来の日本映画にはほとんど登場しなかったタイプの、主体的で理知的なヒロインを描いているが、山本富士子が演じる舟木きわも、その延長線上に位置する存在といえるだろう。舞台は伝統的な京染めの世界である。カメラマンの宮川一夫が、当時の京都の景色を美しくとらえており、山本の魅力を引き出すために色彩をグレーに絞った効果も発揮されている。愛する男の妻が病死、その死を待っていたかのような自分が許せない主人公。そして自ら選んだ別れがくる。その一種決然とした生き方は、彼女が旧い世界の住人であることを感じさせない「誇り高き女」であり、山本富士子は本作を契機にトップ・スターの道を歩み始めた。なお、この当時は日本映画の色彩化への過渡期にあたり、本作は吉村監督にとっても初めてのカラー作品、夜汽車の漆黒の窓を流れていく赤いネオンサインなどに見られるように随所に色彩の工夫を見せている。「キネマ旬報」ベストテン第2位。
1956年/104分/カラー/スタンダード/モノラル/大映(京都)
原作:沢野久雄
脚本:田中澄江
監督:吉村公三郎
撮影:宮川一夫
音楽:池野成
美術:内藤昭
出演:山本富士子、上原謙、小野道子、市川和子、阿井美千子、川崎敬三、小沢栄太郎、東野英治郎、橘公子、山茶花究
作品上映
雪国
作品上映
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雪国
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という有名な冒頭ではじまる川端康成の不朽の名作小説を映画化したもので、文芸映画を得意とした豊田四郎が監督した。日本画家の島村(池部良)は、戦争へと突き進む暗い世相のなかで、一年前に越後湯沢の温泉場で逢った芸者・駒子のことが忘れられず、再びその温泉場を訪れる。二人は互いに惹かれ合うが、駒子には義母とその息子を養うため旦那を持っており、島村は東京に妻子がいた…。徐々に惹かれ合ってゆく島村と駒子の心理が、熟練した豊田四郎の細やかな演出で表現される。また、雪国の空気と生活感がにじみでる映画美術も、本作を格調高いものにしている。岸惠子は本作の製作中に、フランス人映画監督のイヴ・シャンピとの婚約を発表して時の人となり、封切と時を同じくしてフランスへ旅立った。原作小説は1965年にも、岩下志麻・木村功主演で再映画化されている。
1957年/133分/白黒/スタンダード/モノラル/東宝
原作:川端康成
監督:豊田四郎
脚色:八住利雄
撮影:安本淳
音楽:団伊玖磨
美術:伊藤熹朔
出演:池部良、岸惠子、八千草薫、久保明、田中春男、浪花千榮子、浦辺粂子、千石規子、三好榮子、市原悦子
上映/イベントスケジュール
上映期間:2021年1月8日(金)〜11日(月)
日付 | 時間 |
上映作品 イベント |
1月8日(金) | 10:30〜12:47 |
五番町夕霧楼 |
1月8日(金) | 13:10〜15:53 |
五瓣の椿 |
1月9日(土) | 13:00〜14:44 |
夜の河 |
1月9日(土) | 15:10〜17:23 |
雪国 |
1月10日(日) | 13:00〜15:43 |
五瓣の椿 |
1月11日(月) | 10:30〜12:43 |
雪国 |
1月11日(月) | 13:15〜14:59 |
夜の河 |
1月11日(月) | 15:30〜17:47 |
五番町夕霧楼 |
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チケット情報
料金
料金
当日
- 一律
- 500円
備考
チケットは当日券のみ。館内2階・スタジオC受付にてご購入ください。
特別割引は、シニア(65歳以上)と障がい者および同行の介護者が対象となります。
基本情報
上映期間 |
2021年1月8日(金)〜11日(月) |
上映作品 | 4作品 |
チケット情報 | 有料 |
クレジット |
主催:公益財団法人山口市文化振興財団、国立映画アーカイブ |