フレデリック・ワイズマン特集

世界中からの移民とその子孫が暮らしている。しかし町の個性は再開発による危機に瀕していた。ワイズマンの視線はジャクソンハイツのあらゆる場所、あらゆる人に向けられる。教会、モスク、シナゴーグ、レストラン、集会、コインランドリー。地域のボランティア、セクシャル・マイノリティ、不法滞在者、再開発の波にのまれる商店主たち。下町風景が多層的に重なっていくことによって、アメリカが抱える問題が次第に浮き彫りになってゆく。ドキュメンタリー40作目の監督作となった本作は、ワイズマンが得意とする「町ドキュメンタリー」の傑作。

精神異常犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を描いた作品。収容者が、看守やソーシャル・ワーカー、心理学者にどう扱われているか、様々な側面から記録される。91年に上映許可されるまで、合衆国裁判所で一般上映が禁止された唯一の作品。

霊長類に関する生物医学的、行動学的研究における先駆的な施設、ヤーキーズ霊長類研究所。そこで行われる様々な動物実験が、研究の目的や意義はほぼ説明なく次々と映し出される。本作は研究所を貶めたとする人々と、実験に反対する人々との議論を巻き起こした。

フィラデルフィア郊外にある「模範的な」高校の日常。授業風景から生活指導、進路相談、男女別に行われる性教育や家庭科の授業、クラブ活動。高校を構成する人々の関わり合いの中で、イデオロギーや価値観が醸成され、伝えられていく様が映し出される。

1907年の開店以来、高級百貨店として揺るぎない地位を築いてきたニーマン＝マーカス百貨店テキサス州ダラス本店。1982年のクリスマス・シーズンにおけるニーマン＝マーカスを舞台に、訪れる客や接客する従業員、華やかな売場の舞台裏で働く人々の姿が映し出される。

コメディ・フランセーズの女優カトリーヌ・サミィのために脚色した「人生と運命」の一章を映画化したもの。1941年のウクライナ、ゲットーのユダヤ人たちはナチに全員殺されることになった。年老いた女医アンナ・セミョーノワは、息子に宛てた手紙を口述筆記する。

ニューヨークのハーレム地区スペイン語圏にある進学校。革新的教育者デボラ・マイヤーが設立した、学校が誇るユニークなカリキュラムを捉えるとともに、文系と理系の学校活動、人種や性別についての討論、職員会議、性教育、生徒による紛争解決などが描かれる。