アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ

場末のナイト・クラブ。なまめかしく踊るブロンドの美女を、黒いス―ツを身にまとった男が見つめている。男の名は、ヴァルテル。謎の地下組織で情報の運び屋をしている。シュルレアリスム画家ルネ・マグリットの多数の絵画をモチーフに、幻想とめくるめく官能が交錯する、日本で唯一の劇場公開作。

イスタンブールで休暇を過ごし始めた教師の男は、陽気だがどこか謎めいた若い女と出会う。邂逅が続くうち、男は彼女の不可解さに妄執をかき立てられる。従来の「劇映画」の概念を大きく逸脱した過激な語り口が世の驚愕と憤怒を同時に招来した、いまだ「新しさ」に満ちたロブ＝グリエの監督デビュー作。

パリからアントワープへと麻薬を運ぶ男の波乱万丈な道中を、多重のメタフィクションで構築し、「ヨーロピアン・アバンギャルドの最重要作品」と絶賛され、公開時ヒットを記録した2作目。スリラー映画の枠組みを借りてシリアスとコミカル、嘘と真実、合理と非合理の境界を軽やかに行き来する快作。

第二次大戦末期のスロバキア共和国。ある小さな村にレジスタンスの英雄ジャンの親友だと名乗る男が現れ、村人の妻や妹を誘惑し始める。ボルヘスの短編「裏切り者と英雄のテーマ」を下敷きに、ルイジ・ピランデッロへのオマージュも込めつつ、現実と虚構のデッドゾーンへと観るもの全てを誘う。

ルームメイト殺しの容疑で逮捕されたアリス。心臓にハサミが突き刺さった遺体には書きかけの聖女の殉教の絵。一体何が？ロブ＝グリエ自身が「この女性は来るべき革命の希望を体現しているのだ」と語るセンセーショナルな表現は物議を醸し、各国で上映禁止、フィルムが焼かれる事件まで発生した問題作。

「カフェ・エデン」にたむろして退廃的な遊戯や儀式に興ずるパリの大学生の一団。彼らの前に突如現れた謎の男が差し出す麻薬らしき粉末を飲んだヴィオレットは、死や性愛をめぐるさまざまな幻覚に襲われる。蠱惑的な色彩設計やSM行為、チュニジア・ロケ等鮮やかな画面に目を奪われる初のカラー作品。