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Select CINE TECTONICS #19

トーマス・アルスラン＋R・W・ファスビンダー監督特集

社会性と叙事性、変転するドイツ的背景が接合されていく現代の肖像

ドイツ映画研究の渋谷哲也氏を監修にむかえ、インディペンデント映画の騎手・トーマス・アルスランとニュージャーマンシネマを代表する映画作家、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの作品を中心にしたドイツ映画を特集上映します。

R.W.ファスビンダーは、オルタナティブ演劇からスタートし、37歳で夭逝するまでに、40本以上の映画作品を作り上げ、戦後のドイツ／ヨーロッパ映画史を代表する存在となっている。主題に通底する、世代間の相克、移民、ホモセクシャルといった社会性、多元化文化への眼差し以上に、映像が湛えるその乾ききった叙情性は、永遠に主張を続けるに相応しい創造性といえるだろう。統一前のドイツの思潮と混沌を苛烈に描き出したのがファスビンダーとすれば、トルコ系ドイツ人であるアルスランは、統一後の多様化するドイツの様相を、ドキュメンタリー要素を多分に含んだ、透徹したスタイルの劇映画に見出していく特徴をもつ。本特集は、統一前後の2作家の現在性を比較しつつ、ファスビンダーの大作「ベルリン・アレクサンダー広場」と、A.デープリンの原作刊行と同時期の1920年代のベルリンを記録映像化した、ルットマンの「ベルリン・大都市交響楽」とを併映することで、未完のドイツ映画史の一断面化を試みる。