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増村保造×柳町光男

人間ドラマこそが映画である
独自の視点の人間像を描き続けた2人の作家、増村と柳町

大胆に捉えた人間ドラマが、それぞれの時代を超えたいまでも多くの人々を魅了し続けてやまない映画作家、増村保造と柳町光男。飽くなき人間ドラマへの方法論の探求を表現し続けた2人の作品を特集上映します。

増村保造／柳町光男

戦後の日本映画史を確実に背負う存在である映画監督の一人、増村保造。多作な作家であり、大映のスタジオシステムの興盛と衰微をありのまま体感した増村は、その後TVドラマの脚本においても、その才能を継続して発揮するが、晩年の代表作「曽根崎心中」を撮り上げ、バブル最盛期にこの世を去る。

一方、柳町光男は、バブルの経済的繁栄と入れ子状の虚構を冷徹に見つめつつ、それとは正反対の沈黙摩耗する社会の周辺部へと、いち早く眼差しを差し向け、中上健次の原作をはじめとした、濃密なドラマを映画として世に送り出す。寡黙な作家でありながら、その筆致は屹立した鋭さを秘めており、激しい情動が映画全体を覆い尽くしている。

両者に共通するのは、全く異なる世相、社会背景、速度を背負いながらも、妥協を施さない細やかな人間観察の視座と、飽くなき人間ドラマへの方法論の探求を、高いレベルで実現し続けた点であるだろう。今回は、この2人の作家を併せて俯瞰することで、日本映画の一断面の再発見を試みる。