川島雄三監督特集
還って来た映画、川島雄三を再発見する
昨年2008年は、映画監督川島雄三の生誕90年にあたり、その前年2007年は代表作である「幕末太陽傳」(57)から半世紀として、東京国立近代美術館フィルムセンターで大規模な回顧上映がおこなわれました。今回はそれらの再評価を受けて初期から後期までの全般にかけて15作品をセレクトし、4週に渡って特集上映をおこないます。
川島雄三は、戦前に松竹に入社し、終戦の1年前にさまざまな制限や検閲の中、「還って来た男」で監督デビューします。その後川島は、松竹〜日活〜東宝系列〜大映と渡り歩き、カラーが違う製作会社のスタジオプロダクションを背景に、喜劇からサスペンス、メロドラマ、人情もの、文芸作品まで、多彩なジャンルのプログラム・ピクチャーの作り手として活躍しました。一世代前の小津安二郎が、巨匠としての歩みを刻み始める「晩春」を製作する40年代末に、同じ松竹において例えば「シミ金のオオ!市民諸君」(48)といった、時代をはるかに先取りするスピードへの執着と諧謔的な展開手法をすでに世に送り出していた点を忘れることはできないでしょう。そこにはスタジオシステムに依存しつつも、確定的なフレームを逸脱していく破壊的な実験精神が見て取れます。「幕末太陽傳」のラストシーンが現代につながるといったアイデアは実現はされませんでしたが、同じ青森県出身の寺山修司が後におこなう異化的手法をすでに先見していたとも言えます。多様な主題やジャンルをいとも軽やかに横断していく川島作品が、なぜつねに異色作や快作として語り継がれるのか、今回の上映で再発見していただければと思います。フランキー堺、小沢昭一、森繁久彌、淡島千景を初めとする芸達者たちを初め、幅広い役をこなした三橋達也など、川島映画常連の役者や当時、演技派として注目を浴び始めた若尾文子など、豪華なキャストにも着目です。
上映作品15作品
作品上映
還って来た男
作品上映
/0
還って来た男
戦地から帰還したばかりの軍医の日常を周囲の人々を交えながらユーモラスに描く。作家・織田作之助が自作である「清楚」「木の都」を脚色した、川島の監督デビュー作。
1944年/67分/日本/白黒/松竹大船
監督:川島雄三
原作:織田作之助
撮影:斎藤毅
出演:佐野周二、田中絹代、笠智衆、三浦光子
作品上映
幕末太陽傳
作品上映
/0
幕末太陽傳
古典落語の「居残り佐平治」「品川心中」などを題材に、幕末の遊郭で一文なしの分際でありながら、調子よく立ち振る舞う、一人の自由な男を中心に描いた、川島の代表作。
1957年/110分/日本/白黒/日活
監督:川島雄三
撮影:高村倉太郎
音楽:黛敏郎
出演:フランキー堺、左幸子、南田洋子、石原裕次郎
作品上映
暖簾
作品上映
/0
暖簾
舞台は大阪。老舗の昆布問屋で厳しい丁稚奉公をつとめた男が、主人に分けてもらった暖簾を息子と共に浪花の商人魂で守る姿を描いた年代記。
1958年/123分/日本/白黒/宝塚映画=東宝
監督 : 川島雄三
原作:山崎豊子
撮影:岡崎宏三
出演:森繁久彌、山田五十鈴、中村鴈治郎、乙羽信子、中村メイ子、浪花千栄子
作品上映
貸間あり
作品上映
/0
貸間あり
大阪の通天閣近くに建つアパートに住む男とその周辺の風変わりな人々の悲喜こもごもを盛り込みながら、逞しく生きていく人々の姿を描く群像劇。
1959年/112分/日本/白黒/宝塚映画=東宝
監督:川島雄三
原作:井伏鱒二
撮影:岡崎宏三
出演:フランキー堺、淡島千景、乙羽信子、浪花千栄子、清川虹子
作品上映
花影
作品上映
/0
花影
銀座のバーで働く美しいマダムと様々な男達との恋愛模様。
出会いと別れを繰り返し、やがて絶望へとむかっていく過程を描いたメロドラマ。
1961年/99分/日本/カラー/東京映画=東宝
監督:川島雄三
原作:大岡昇平
撮影:岡崎宏三
出演:池内淳子、佐野周二、池部良、三橋達也、高島忠夫、淡島千景
作品上映
女は二度生まれる
作品上映
/0
女は二度生まれる
優しく純粋であるが故に、恋の遍歴を重ねていく芸者の物語。本作で主演した若尾文子は、キネマ旬報やブルーリボンの主演女優賞を受賞。
1961年/99分/日本/カラー/大映東京
監督:川島雄三
原作:富田常雄
撮影:村井博
出演:若尾文子、藤巻潤、フランキー堺、山村聡、山茶花究、山岡久乃
作品上映
東京マダムと大阪夫人
作品上映
/0
東京マダムと大阪夫人
東京郊外にある社員住宅地の隣同士に住む、大阪育ちの妻を持つ西川家と東京育ちの妻を持つ伊東家の間でおこる日々の出来事をテンポよく痛快に描く。
1953年/96分/日本/白黒/松竹大船
監督:川島雄三
原作:藤沢桓夫
撮影:高村倉太郎
出演:三橋達也、月丘夢路、大坂志郎、水原真知子
作品上映
洲崎パラダイス 赤信号
作品上映
/0
洲崎パラダイス 赤信号
洲崎遊郭を舞台に、腐れ縁の貧しい男女と周囲の人々の人間模様を描く。
甲斐性なしの男を演じた三橋達也をはじめ、役者たちの熱演が印象的な傑作。川島自身が気に入っていた作品のひとつ。
1956年/81分/日本/白黒/日活
監督:川島雄三
原作:芝木好子
撮影:高村倉太郎
出演:新珠三千代、三橋達也、轟夕起子、植村謙二郎
作品上映
青べか物語
作品上映
/0
青べか物語
人間的に一癖も二癖もある人々が多く住む集落の人々とある作家の交流を描き、叙情的な印象をうける群像劇。カメラマン岡崎宏三の撮影術が圧巻。
1962年/101分/日本/カラー/東京映画=東宝
監督:川島雄三
原作:山本周五郎
撮影:岡崎宏三
出演:森繁久彌、乙羽信子、フランキー堺、池内淳子、左幸子、東野英治郎、加藤武、左卜全
作品上映
わが町
作品上映
/0
わが町
デビュー作「還ってきた男」に続き、織田作之助原作品を映画化。人情溢れる、大阪の天王寺を舞台にフィリピンの道路建設の仕事に係わったことにほこりを持つ男の年代記。
1956年/98分/日本/白黒/日活
監督:川島雄三
原作:織田作之助
撮影:高村倉太郎
出演:辰巳柳太郎、南田洋子、三橋達也、高友子、大坂志郎、小沢昭一、北林谷栄、殿山泰司
作品上映
グラマ島の誘惑
作品上映
/0
グラマ島の誘惑
敗戦直前に南方の孤島であるグラマ島に漂着した一団の日々の騒動を描く。
皮肉を込めたブラックユーモアを満載しただけでなく、キャスティングの面白さも逸脱した異色作。
1959年/106分/日本/カラー/東京映画=東宝
監督:川島雄三
原作:飯島匡
撮影:岡崎宏三
音楽:黛敏郎
出演:森繁久彌、フランキー堺、桂小金治、浪花千栄子、轟夕起子
作品上映
しとやかな獣
作品上映
/0
しとやかな獣
守銭奴の一家が住む団地を舞台に繰り広げられる金をめぐったモラルなき、騙し合い。実験的なカメラワークもさながら、出演者達の悪党ぶりに驚きを隠せない、川島の演出に脱帽せざるおえない渾身の傑作。
1962年/96分/日本/カラー/大映東京
監督:川島雄三
原作:新藤兼人
出演:若尾文子、川畑愛光、伊藤雄之助、山岡久乃、浜田ゆう子、山茶花究、小沢昭一、高松英郎、船越英二、ミヤコ蝶々
作品上映
愛のお荷物
作品上映
/0
愛のお荷物
人口増加にあたり、受胎調整を唱える厚生大臣一家に次から次へと舞い込んでくる"おめでた話"をめぐっての騒動をテンポ良く描いた喜劇。アンドレ・ルッサンの戯曲「あかんぼ頌」に想を得ている。
1955年/111分/日本/白黒/日活
監督:川島雄三
撮影:峰 重義
音楽:黛 敏郎
出演:山村 聰、三橋達也、北原三枝、轟夕紀子、山田五十鈴、東野英治郎、フランキー堺、小沢昭一、殿山泰司
作品上映
雁の寺
作品上映
/0
雁の寺
厳しい戒律の禅寺を舞台に僧と妾と少年僧の愛憎劇を官能的に描いた文芸大作。カメラマン村井博による絵画的な面から入る撮影は川島に大きな影響を与えた。
1962年/98分/日本/パートカラー/大映東京
監督:川島雄三
原作:水上 勉
撮影:村井博
出演:若尾文子、木村功、高見国一 、三島雅夫、山茶花究、中村鴈治郎
作品上映
喜劇とんかつ一代
作品上映
/0
喜劇とんかつ一代
とんかつ屋の主人とその周辺の人々を描いた喜劇の傑作。芸達者な役者達に川島の演出がさえわたる。テーマ曲は森繁久彌が朗朗と歌い上げた。
1963年/94分/日本/カラー/東京映画=東宝
監督:川島雄三
原作:八住利雄
撮影:岡崎宏三
出演:森繁久彌、淡島千景、フランキー堺、加東大介、三木のり平、池内淳子、木暮実千代
上映/イベントスケジュール
上映期間:2009年5月1日(金)〜31日(日)
日付 | 時間 |
上映作品 イベント |
5月1日(金) | 13:30〜14:37 |
還って来た男 |
5月1日(金) | 19:00〜20:50 |
幕末太陽傳 |
5月2日(土) | 13:30〜15:33 |
暖簾 |
5月2日(土) | 16:00〜17:52 |
貸間あり |
5月2日(土) | 18:30〜20:09 |
花影 |
5月3日(日) | 13:30〜15:09 |
女は二度生まれる |
5月3日(日) | 16:00〜17:07 |
還って来た男 |
5月4日(月) | 13:30〜15:20 |
幕末太陽傳 |
5月4日(月) | 16:00〜17:39 |
花影 |
5月4日(月) | 18:30〜20:33 |
暖簾 |
5月5日(火) | 13:30〜15:22 |
貸間あり |
5月5日(火) | 16:00〜17:39 |
女は二度生まれる |
5月8日(金) | 13:30〜15:06 |
東京マダムと大阪夫人 |
5月8日(金) | 19:00〜20:21 |
洲崎パラダイス 赤信号 |
5月9日(土) | 13:30〜15:11 |
青べか物語 |
5月9日(土) | 16:00〜17:36 |
東京マダムと大阪夫人 |
5月10日(日) | 13:30〜14:51 |
洲崎パラダイス 赤信号 |
5月10日(日) | 15:30〜17:11 |
青べか物語 |
5月15日(金) | 13:30〜15:08 |
わが町 |
5月15日(金) | 19:00〜20:46 |
グラマ島の誘惑 |
5月16日(土) | 13:30〜15:06 |
しとやかな獣 |
5月16日(土) | 16:00〜17:38 |
わが町 |
5月17日(日) | 11:00〜12:46 |
グラマ島の誘惑 |
5月17日(日) | 17:00〜18:36 |
しとやかな獣 |
5月29日(金) | 13:30〜15:21 |
愛のお荷物 |
5月29日(金) | 19:00〜20:38 |
雁の寺 |
5月30日(土) | 13:30〜15:04 |
喜劇とんかつ一代 |
5月30日(土) | 15:30〜17:21 |
愛のお荷物 |
5月31日(日) | 13:30〜15:08 |
雁の寺 |
5月31日(日) | 16:00〜17:34 |
喜劇とんかつ一代 |
作品が見つかりませんでした。 |
チケット情報
基本情報
上映期間 |
2009年5月1日(金)〜31日(日) |
上映作品 | 15作品 |
チケット情報 | 有料 |
クレジット |
フィルム・写真提供:松竹株式会社/日活株式会社/角川映画株式会社/東宝株式会社 |