ペドロ・コスタ監督特集

今年49歳になるポルトガルの映画監督ペドロ・コスタ。今回、コスタの最新作の短編を含む近作４本を同時公開する。

その中心をなす「コロッサル・ユース」「うさぎ狩り」は舞台を、アフリカ系移民が居住するリスボン郊外のファンタイーニャス地区に置いている。映画の登場人物たちは、そこに実際に暮らす人々が出演して撮影された。アフリカのセネガル沖に浮かぶ島国からなる旧ポルトガル領の共和制国家カーボ・ヴェルデ。彼らは、そのほとんどがカーボ・ヴェルデからの移民である。コスタは、初のカラー長編作品である「溶岩の家」（94）では、ポルトガルからカーボ・ヴェルデへ旅し、当地で居住するヨーロッパ人を主役とした。その次作となる「骨」（97）からは、反対にカーボ・ヴェルデからのアフリカ系移民のファンタイーニャスにおける日常が話の中心となっている。この遠隔の往還の中で、映画あるいは撮影行為とは何から出発すべきかが、自問自答される。コスタの旅とは、できるかぎりミニマムな予算で、撮影機材で、機動力で、現実を撮影する作業への移行としても捉えられる。「コロッサル・ユース」は、DVカムで撮影され35ミリにブローアップされているが、その結果の不思議な色調と空間はこれまでにない現実を生んでいるのではないか。しかしながら、そのファーストショットをみれば一目瞭然なように、これは映画史への批評的視点とクリシェを有効に活用した、最も豊穣な１ページとなっていることにも気づかされる。これらの作品を見た観客は、これまでに存在する、そしてこれから存在として生まれる、すべてのコスタの作品を、即座に視たいと思うようになるだろう。芸術家に対する希望の原理とはこのことを指すのである。