フィリップ・ガレル監督特集

シリーズ第9回目は、「ヌーヴェルヴァーグのアンファン・テリブル（恐るべき子供）」と言われながら、リアルタイムでは日本には紹介されてこず、その後数 作は公開されたものの、いまだ全貌をつかむことのできない、伝説的なフランスの映画作家フィリップ･ガレルを特集いたします。

1960年代に「ヌーヴェルヴァーグのアンファン・テリブル（恐るべき子供）」と称され、ポストゴダール世代の1人として、一貫した非体制妥協的な映画制 作によって、独自の世界を凝視し続けているフランスの映画監督フィリップ・ガレル。ヴェルヴェットアンダーグラウンドのニコやジーン・セバーグといった時 代のファムファタールとの公私を超えた交流によって、極私的な視点からの男女の人間関係や子供に対するエモーショナルなヴィジョンを、映像と物語の中に作 り出しています。今回の上映作品では、ラウール・クタール（ゴダール『勝手にしやがれ』『パッション』）、ウィリアム・リュプシャンスキー（リヴェット 『ジャンヌ/薔薇の十字架』、イオセリアーニ『月曜日に乾杯！』）といった、ヨーロッパ最高の撮影監督たちとの共同作業によって生み出された、寡黙なモノ クロームの世界が見事な効果を上げています。

シリーズ映画史を読み解く

映画とはどのような発想によってこのような再現芸術として発展・定着したのか？
その100年余の過程を振り返るために、今年度の「シリーズ映画史を読み解く」では、映画における常識的な説話的展開技法を凝縮あるいは圧縮し、あえて踏み外す創意=フィルムのつくりだす持続の空間・時間に焦点を当て、映画史を読み解く一つの鍵とする。

選定コンセプト

堀家敬嗣（山口大学教育学部講師）
新しい（現代的な）映画の特徴は多々ありますが、映画独特の時間性「退屈」さもまたそのひとつと考えられます。では、「退屈」な映画とはなにか、すなわち、映画にとっての「退屈」さとはなにか、映画が「退屈」であるとはどういうことなのか。そうした問いによって、映画における古典性と近代性を隔てるものを規定していこうという試みです。