ストローブ＝ユイレ特集

孤高の存在を保ち続ける、現代芸術史上、最も重要な映画作家の1人、ストローブ=ユイレの最新作を含む映画作品2本を上映いたします。またペドロ・コスタ監督による、彼らの作品制作の過程を記録した貴重なドキュメンタリー映画を、参考作品として合わせて上映いたします。

ジャンマリー・ストローブとダニエル・ユイレは、共同映画監督として60年代初頭よりこれまで、20数本の映画作品を発表してきている（ユイレは06年死去）。彼らのユニークな点は、企画段階から、撮影、編集、プリント、配給に至るまでのすべてを、自らの権利の元に制作をおこない、あらゆる点で妥協を排した完璧な作品を作り上げていくことにある。商業的映画の対極をいくその歩みは、その映像やサウンドがなぜそこで選ばれたのか、映画を撮影するという現在的行為が何なのかを、美学的、歴史的、政治的に厳密に突き詰めた、映像と音のコンポジションとして提示しているのである。ミニマリズムを通過した先に生まれる豊穣さを追求する、断固とした制作姿勢に対して、ヨーロッパ超一級の撮影カメラマンがつねに参加し、その成果から生み出される映像の極限的な美しさにも注目できるだろう。

シリーズ映画史を読み解く

映画とはどのような発想によってこのような再現芸術として発展・定着したのか?その100年余の過程を振り返るために、今年度の「シリーズ映画史を読み解く」では、映画における常識的な説話的展開技法を凝縮あるいは圧縮し、あえて踏み外す創意=フィルムのつくりだす持続の空間・時間に焦点を当て、映画史を読み解く一つの鍵とする。

選定コンセプト

新しい（現代的な）映画の特徴は多々ありますが、映画独特の時間性「退屈」さもまたそのひとつと考えられます。では、「退屈」な映画とはなにか、すなわち、映画にとっての「退屈」さとはなにか、映画が「退屈」であるとはどういうことなのか。そうした問いによって、映画における古典性と近代性を隔てるものを規定していこうという試みです。（堀家敬嗣／山口大学教育学部助教授）