黒い眼のオペラ

マレーシアの首都、クアラルンプール。瀕死の重傷を負って彷徨うシャオカンはラワンという男に手当てされる……。ツァイ・ミンリャン監督が、初めて故郷マレーシアを舞台に描く愛の物語。
ツァイ・ミンリャン（蔡明亮）監督は『愛情萬歳』（94年）で、弱冠37歳にしてヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞、「台湾」を代表する映画監督として知られている。1957年にボルネオ島のクチンで、祖父の時代に広東省から移住した華僑の一家に生まれた監督は、北京語、繁字体（旧字体）という環境で学び、その後、台湾の大学に進学、才能を開花させた。本作はクアラルンプールに実在する、90年代後半のアジア経済危機により建設半ばで打ち捨てられた巨大廃墟で撮影。そのオペラハウスを思わせる圧倒的な映像美と、監督に見出され『青春神話』（92年）以降のツァイ・ミンリャン全作品に主演し続ける、シャオカンを演じるリー・カンション（李康生）の演技は必見。
解説：大久保雅子（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）