いつか読書する日

50歳で独身の大葉美奈子は、朝は牛乳配達、昼はスーパーで働いている。毎夜の読書を楽しみに静かな生活を送る彼女には忘れられない人がいる。その人は、同じ町に住み、毎朝、牛乳を届けている高梨槐多である。美奈子と槐多は高校時代の初めての恋を互いに閉じ込めたまま、別々に生きてきたのだった。しかし、槐多の妻で、末期癌で寝たきりの容子は、そんな二人の密かな想いに気づいていた。
地方都市を舞台に、静かに日々を暮らす、ごく普通の男女を描きながら、新鮮さと、日本映画本来の心に染みる叙情を併せ持つ作品だ。
日本映画界で高い評価と人気を持つ田中裕子と岸部一徳が、美奈子と槐多を演じる。去年は「火火」「埋もれ木」、そして、本作「いつか読書する日」で共演が続いたベテラン俳優の二人が、本作では男と女として向き合い、溢れる切なさを綴っていく。静謐な大人の恋愛を描く本作は2005年度キネマ旬報日本映画ベストテンの第3位を獲得、田中裕子は同日本映画主演女優賞を受賞した。「独立少年合唱団」の緒方明監督の第二作。
解説：大久保雅子（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）