輝ける青春

1966年、夏、ローマ。
イタリアのごく普通の中流家庭・カラーティ家は、両親と長女、長男、次男、次女の6人家族。大学生で一つ違いの兄・ニコラと弟マッテオは仲が良く、ノルウェーのノース岬をめざす大陸横断の旅を計画中だ。出発を前にして二人は、精神病院で不当な扱いを受けているジョルジアという少女と出会い、彼女を救い出そうとする……。
6時間6分という時間をかけて、イタリアのひとつの家族の37年間を描いていく。ニコラとマッテオの兄弟が映画の冒頭から、輝く存在感で観客を魅了する。二人が対照的な性格であることが次第に明らかになり、それぞれの人生とイタリアの現代史が巧みに絡んでいく。60年代以降という身近な過去を描いた映画の中でも、この作品の豊かさと重みは特別だ。この物語はイタリアという遠い国の出来事ではなく、日本も含めた当時の若者たちが共に抱いた理想、苦悩、痛み、そして歓び、希望を描いている。いや、私たちは兄弟と一緒に、20世紀後半という、青春と呼ぶにふさわしい時代を体験し、共有して、心の底を熱くする。そして、物語が2003年、現代にたどり着き、豊穣の時を迎えた後も、心の中で何度も二人の人生をくり返し、今、この時代が成熟を迎えているかを問うのだ。
解説：大久保雅子（コミュニティシネマ・プログラムコミッティ）