イノセント・ボイス 12歳の戦場

1980年代、政府軍と反政府ゲリラ組織との、激しい内戦下にあった中米・エルサルバドル。11歳の少年チャバは、前線地帯にとり残された小さな町・クスカタンシンゴに住んでいる。内戦下でありながらもチャバには、学校に通い、友達と遊ぶ少年らしい時間と、母と姉と弟との、つつましいながら優しい家族との暮らしがあった。しかし、政府軍は、12歳を迎えた少年たちを、兵士として強制的に徴集するのだった……。
1980年、エルサルバドルでは、政府軍と反政府組織FMLNの内戦が勃発した。FMLN（ファラブンド・マルティ民族解放戦線）は、長く続く軍事独裁政権から、武力で政権を奪うために結成されたが、もとは貧富の差を背景に、1930年代の世界大恐慌で仕事を失って蜂起・鎮圧された農民たちの意志を受け継ぐ組織である。内戦の中で、昨日まで一緒に遊んでいた少年たちが、政府軍とゲリラ組織に分かれていく。どちらに進んだとしても、間違いなく戦争は少年たちの、そして人間の精神を破壊する行為に変わりはない。この内戦は12年続いたが、今でも世界では同様のことが起こっている。本作は、ロサンゼルス在住の俳優オスカー・トレスによる自伝的脚本を、メキシコ出身のルイス・マンドーキが監督した、真実の物語である。
解説：大久保雅子（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）