カポーティ

2006年のアカデミー賞で主要5部門にノミネートされただけでなく、数々の賞を総なめした話題作。なかでも一躍、その名を世界に知らしめることになったのが、主演のフィリップ・シーモア・ホフマン。知る人ぞ知る、演技派であった彼が演じたのが「ティファニーで朝食を」「遠い声 遠い部屋」で知られる天才作家トルーマン・カポーティである。人気作家カポーティは、ある陰惨な殺人事件を題材に小説「冷血」を執筆し始める。やがて、お互いの心に潜む似たものを感じ始めたカポーティと犯人・ペリーは、心を通わすようになるのだが、その先に待っているのはペリーの死刑だった。ペリーが死刑にならなければ、小説は完成しない。死刑で彼を失うことを恐れると同時に傑作が生まれることを切望する2つの心に苦悩するカポーティ……。「冷血」が、彼の後の人生にどれだけの影響をあたえ、歓喜と絶望と悲しみをあたえたかを見事に描く本作は、彼が「冷血」以後、本を完成させていないということに納得せずにはいられない、天才作家の人間としての痛みをみせつけられる作品である。
解説：YCAM（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）