運命を分けたザイル

1985年、二人組のイギリス人登山家がアンデス山脈にある、前人未踏のシウラ・グランデ峰、西壁登頂に成功する。しかし、下山途中で嵐に見舞われ、一人が片足を骨折、氷の絶壁で宙吊りになってしまう。パートナーは必死の救出を試みるが、標高6400メートル、体感温度マイナス60℃、遙か下方には大きく口を開けたクレバスが……。二人を繋ぐのはたった1本のザイル（命綱）。しかしザイルを切らなければ、二人とも死んでしまう。究極の選択を突きつけられた二人の運命は……。登山家ジョー・シンプソンが実際の体験を著した、ノンフィクション文学「死のクレバスアンデス氷壁の遭難」が原作。世界的なベストセラーでありながら、映画化は難しいといわれていたが、アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞受賞のケヴィン・マクドナルド監督が映画化。大部分の撮影は実際の事故現場であるアンデス山脈で行われ、その圧倒的な映像は、どうやって撮影したのだろうと思わせる。そして、極限状態で人間がたどる心理、本質……。本作は壮絶なサバイバルだけではなく、人間の存在価値を問う深淵なテーマを描いた真実の物語だ。2004年イギリス・アカデミー賞最優秀英国映画賞受賞作品。
解説：大久保雅子（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）