復讐者に憐れみを

悲劇が生んだ五感を揺るがす魂の高揚！現代韓国映画を代表する1本『JSA』とカンヌ映画祭グランプリがまだ記憶に新しい『オールドボーイ』。この2本の作品で知られるパク・チャヌク監督が5年の歳月をかけて作りあげた大問題作が登場！子供の誘拐事件と悲劇的な死。その結果、ひたすら復讐に向かう人間の心を乾いたタッチと徹底したリアリズム、救いのないブラックユーモアを交えて描いたこの作品は、韓国ではあまりに悲惨で凄絶な復讐劇であったために、上映後の館内に重たい空気が流れ、豪華なスタッフ・キャストであったにも関わらずヒットはしなかったらしい（2週間で打ち切られたとか）。しかし支持派と不支持派の議論が活発に行われたり、海外の映画祭で次々と受賞するなど、1度見れば決して忘れることの出来ない衝撃作であることは間違いない。主演は『JSA』『殺人の追憶』など韓国を代表する名優ソン・ガンホ（相変わらず絶品！）と、『ほえる犬は噛まない』『リンダリンダリンダ』のぺ・ドゥナ（かわいいけど凄い！）が体当たりの演技を見せる。単純な善悪で割りきれないところで生まれた復讐と暴力の連鎖。それ故にこの物語は痛く切なくやりきれない。最後まで和らぐことのない緊張感にヘトヘトに疲れてください。
注意／悲劇に悲劇が重なり、不毛な復讐の連鎖に巻き込まれていく男女の姿を描いたこの映画は、見る者に痛みを感じさせる残酷・暴力描写がたくさんあります。そういった表現に弱い方にはお薦め出来ません。しかしこれまで味わったことのない濃厚で強烈な映画体験をしたい人は是非ご覧ください。僕は傑作だと思います！
解説：小林ツトム（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）