やさしい嘘

旧ソビエトで経済的な困窮のなかにいる小国グルジアを舞台に、愛する家族の為についた一つの嘘をめぐり母娘孫の三代の女性が抱える葛藤と心の絆を優しく描いた感動の作品。監督のベルトゥチェリは本作が長篇第一作となるフランス映画界期待の新鋭女性監督です。グルジアに住むエカおばあちゃんの楽しみはパリにいる息子オタールからの手紙。フランス語の得意な孫のアダがいつもその手紙をおばあちゃんに読んであげていた。娘のマリーナはエカの愛情がオタールにのみ注がれている様でちょっと素直になれない。しかし、ある日オタールが事故で死んでしまい、エカを悲しませまいと娘と孫はオタールのふりをして手紙を書き続けるが、息子の様子がおかしいと感じたエカはパリ行きを決意する……。エカを演じるゴランタンは85才で映画デビューを果たし、現在91才ですがその包容力と内に秘めた芯の強さを合わせもつ存在感がすばらしい。ユダヤ人で、第2次大戦中収容所から転送された病院を脱走して逃げ延びるという多難な人生を送ったゴランタンの演技は、まさにそれらの経験と人生観が生み出したものでしょう。まだまだ寒い二月末ですが公開以来世界中を魅了した本作品で、心があったか〜くなっていただければ幸いです。
解説：小澤由己子（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）