さよなら、さよならハリウッド

ウディ・アレン演じる主人公ヴァルは映画監督である。まさにつぼにはまった役どころで、彼の芸の集大成的な作品として評価も高い、ウディ・アレン監督・脚本・主演による3年ぶりの新作だ。オスカーを2度受賞したものの今は落ち目の映画監督ヴァル。ある日、彼を捨てて映画製作スタジオの重役のもとへと走った元妻で、敏腕プロデューサーのエリーから、ハリウッド超大作の仕事を持ちかけられる。断ろうとするヴァルだが、とうとう引き受けてしまった。しかし、いざ監督の座につくと、あれこれ注文を出すヴァル。撮影監督には、言葉の通じない中国人、あげくに女優の卵である自分の恋人にもこっそり役をあたえる始末。ところが、クランクインを控えた夜、久しぶりの仕事のプレッシャーで、ヴァルの目は見えなくなってしまう……。リハーサルらしいリハーサルはやらないというスタイルで、「即興？と思われるくらい自然発生的にやりたいんだ」語るウディ・アレン。今回は自前の衣装で出演といううれしい見どころも。ナンセンス、パロディ、風刺満載のコメディでありながら、心にしみる人間ドラマがあり、その絶妙さはさすがウディ・アレンの面目躍如といえる1本だ。
解説：大久保雅子（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）