コーヒー＆シガレッツ

ジム・ジャームッシュは1980年に卒業制作である『パーマネント・バケーション』を発表して以来、新作が出る度に世界中から話題と注目を集める、アメリカインディペンデント映画の監督である。本作『コーヒー&シガレッツ』は86年より今日まで他の作品を制作しながらも、撮りためていた11のショートムービーで構成される。（86年アメリカの人気テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』に1作品撮ったのがはじまり）
彼の作品は、個性的なキャスティング、センスのいい音楽、スタイリッシュな映像が印象的で、ストーリーも作り方もほとんどシンプルなのだが、これらとともにじわりと沸いてくる味わいが魅力。そして、勿論、本作もその魅力は健在である。これまでに、この中の一部の作品が上映されたことがあるが、幸運にも鑑賞できた人々の感想を知る度に、未見の人々は、はがゆい思いをしてきたと思われ、公開のニュースに多くの人々が歓喜した。
様々なカフェを舞台に「どうでもいい話？それとも大事な話？」を他愛なく繰りひろげる人々。テーブルの上にはコーヒーとタバコ。個性的な面々が繰り広げる会話に頷いたり、にやっとしたり、気がつくと時間がたっている、そんな至福の時。撮られた場所も時期も異なる映像に違和感を感じさせないのも凄いこと。単にショートストーリーを集めただけではない、ジャームッシュの仕組んだ何かがある、遊び心溢れる1作。
解説：YCAM（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）