スタンド・バイ・ミー

「オレゴンの小さな町、人口たった1281人、だが私には全世界だった……」映画の冒頭の言葉に、忘れてかけていた胸の小さなトゲがチクリと痛む、そんな感じだ。 その小さな町に住むゴーディ、クリス、テディ、バーンの4人の少年が12歳だった1959年の夏。行方不明中の少年が列車に轢かれているという噂を聞き、死体を発見すれば有名になれると、冒険の旅に出る……。子供時代に、親に内緒で危険な遠出をした記憶がよみがえる。冒険、親との確執、将来への不安……誰もが大人になるために越えなければならない通過儀礼のようなものだ。「死体」というキーワードが、原作者スティーヴン・キングならではの死生観を思わせる。初めて「死」というものを考えるとき、「生」というものを実感できるのかもしれない。そしてかけがえのない人との、心のつながりも。少年たちのリーダー役、クリスを演じたリヴァー・フェニックスは、その後キアヌ・リーヴスと共演した『マイ・プライベート・アイダホ』で1991年ヴェネチア国際映画祭主演男優賞を受賞するなど俳優としてのキャリアを開花させるが、1993年10月31日に23歳の若さで急逝した。ベン・E・キングの名曲をかみしめながら、何度でも観たい作品だ。
解説：大久保雅子（コミュニティシネマ・プログラムコミッティ）