人間の証明

母さん、僕のあの帽子どうしたんでしょうね？「犬神家の一族」の大ヒットで一躍日本映画界の風雲児となった角川春樹事務所による第2弾。東京の高層ホテルのエレベーターで黒人男性が“ストーハ”という謎の言葉と、西条八十の詩集を残して殺される。捜査線上に浮かび上がる人気ファッションデザイナーとその息子。黒人男性の過去を追ってアメリカへと渡る刑事。日本とアメリカを舞台に戦後30年を経て様々な人間模様が交差する刑事サスペンス大作。1977年の公開時、TV-CMを始めとする大量のコマーシャルが投入され、「母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね？」という西条八十の詩の一節が流行語となるなど、大きな話題を生み出した。原作･森村誠一、監督・佐藤純彌、撮影・姫田真佐久、音楽・大野雄二等のスタッフは、翌年に「野性の証明」を大ヒットさせ、80年代を代表する映画女優・薬師丸ひろ子を誕生させることとなる。当時、大きな話題は作ったものの大味な作品という評価を受けた本作だが、改めて見直すと、戦争の残した傷跡に親子の情を絡ませたストーリーはけっこう泣ける（よね？）。作品個々の評価は別として、角川映画についてもっと語られるべきだと思う。松田優作、ジョージ・ケネディ、鶴田浩二など出演陣も豪華。竹野内豊主演で新テレビシリーズのスタートも話題の作品。この機会に見比べてみてはいかがだろうか？解説：小林ツトム（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）