切腹

時代劇ファンの皆様、お待たせいたしました。日本映画史に残る名作中の名作小林正樹監督の『切腹』がついに当館スクリーンに登場します。対面を重んじる武家社会の虚飾と偽善を「切腹」というかたちで格調高く、緊迫感溢れるタッチで描き、その出色の出来は今なお、多くの映画ファンに語り継がれています。寛永七年、井伊家の屋敷に津雲半四郎と名乗る浪人（仲代達也）が現れ、切腹の為に庭先を拝借したいと申し出る。これを聞いた井伊家家老（三国連太郎）は、また浪人が切腹を理由にたかりに来たのだと思い、以前同じように切腹を申し出た浪人千々岩（石浜朗）を実際に切腹させた話をする。話を聞き終えた津雲は静かに身の上話しを始めるが実は千々岩は津雲の娘婿であり、さらに話は驚くべき展開をみせる。千々岩の狂気迫る切腹シーン、対面のみを重んじる家老や武士達の非常さ。前半の緊迫した場面から後半は堰を切ったように展開される津雲の壮絶でダイナミックな殺陣シーンは見応えたっぷり。時代劇の娯楽性を持ちながら、権力者の自分勝手な論理を痛烈に非難した社会派作品、必見です！
解説：小澤由己子（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）