リバー・ランズ・スルー・イット

舞台はアメリカ北西部、大自然に囲まれたモンタナ州、ミズーラの町。この家族の物語は1912年、二人の息子の幼少時代から始まる。威厳のある牧師の父から、フライ・フィッシングの手ほどきを受ける兄ノーマンと弟ポール。兄弟はやがて成長し、それぞれの生きる道を模索し始める……。この物語の原作は、シカゴ大学の教授を70歳で退職したノーマン・マクリーンによる自伝小説「マクリーンの川」。ロバート・レッドフォード監督は「これは僕の家族の物語だ」と、映画化を熱望し、ハリウッドへの強い不信感を持つノーマン・マクリーンを説得。やがてその熱意に映画化を同意したノーマン・マクリーンだったが、映画の完成を見ることなく亡くなったという。また、みずみずしい演技で弟ポールを演じたブラッド・ピットは、この作品で広く世に知られるようになった。この作品のブラッド・ピットが、若き日のロバート・レッドフォード監督に似ていると言われることについては、監督はとくに考慮に入れていたわけではなかったという。フライ・フィッシングのシーンの美しさが、いつまでも色あせずに心に焼きつく。川は流れ、一瞬でその水は変わっていく。時には激しく、時にはおだやかなその流れは、時の流れのようでもある。アメリカの良心を感じる、心に残る映画である。
解説：大久保雅子（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）