さらば、わが愛／覇王別姫

さらば、レスリー・チャン。そして、ありがとう。1993年カンヌ映画祭でグランプリを受賞し、日本でも一大ブームを起こした、香港映画の傑作中の傑作。そして、この作品は今年4月急逝した香港の大スター、レスリー・チャンの代表作のひとつである。『狼たちの挽歌』や『欲望の翼』、『君さえいれば/金枝玉葉』に『ブエノスアイレス』など、多くの作品と甘い歌声でアジア中にファンを持つ、アジアを代表する大スターであるレスリー・チャンを失った悲しみと損失は計り知れない。舞台は中国。幼いときから京劇の厳しい修行を積み重ね、花形スターとなった女形の程蝶衣（レスリー・チャン）と段小樓の2人、その間に分け入る娼婦の菊仙（ゴン・リー）。1925年から1977年の間、日中戦争から文化大革命という、中国の激動の時代の中で、いかに生きたか、愛を貫いたかが描かれている大河ドラマ。日本では歌舞伎に当たる、中国の京劇がとっても良い。演目は覇王・項羽と虞美人の悲劇を描いた「覇王別姫」。音楽も映像も素晴らしい。監督は代表作『黄色い大地』、最近は『北京ヴァイオリン』の陳凱歌（チェン・カイコー）。もし、以前テレビやビデオで見たことがある人も、今回はぜひスクリーンで御覧ください。2時間52分が一瞬に思える、心に残る一作です。
解説：山口映画友の会児玉頼幸（コミュニティシネマ／プログラムコミッティ）