私たちの身体は多種多様な部位によって構成されています。個々の部位についてはその機能やメカニズムが解明されつつあるものの、部位と部位とがどのように連携して、身体全体としての振る舞いを見せるのか、未だにその全容は解明されていません。
このワークショップでは、何もないフラットな環境にゴムひもによる障害物を設置し、そこに身体を投げ入れることで、外部の刺激に対して〈身体〉がどのような反応を見せるのかをダイレクトに表出させます。そして、その反応を客観的に観察/分析することで、慣れ親しみながらも未知の部分が多い自身の身体感覚を再認識し、研ぎ澄ませるとともに、論理的な思考/判断との融合を促します。
ワークショップ概要
所要時間:4時間
参加人数:10名
対象年齢:小学校4年生〜一般
ワークショップの流れ
- このワークショップの説明
- 準備運動
- 空間を知る
- アスレチック(1回目)
- 感想の共有
- アスレチック(2回目)
- 発表
- 感想の共有
- 振り返り
トピック
ゴムひもの空間
床面と天井に、50センチメートル間隔のグリッド状にゴムひもを張る。このゴムひもを束ねたり、交差させたり、あるいは水平方向のゴムひもを新たに追加することで、間仕切りのようなものを生み出し、空間を変化させていく。
アスレチック(1回目)
1回目のアスレチックでは、2人1組になった参加者が、ゴムの空間に入口と出口を設定し、交互にくぐり抜けていくゲームをおこなう。このとき、参加者どちらかがゴムひもに触れずにくぐり抜けることに成功したら、より複雑にゴムひもを束ねたり、さらには新たなゴムひもを追加したりして、もう一方に対しての難易度を上げていく。
参加者はゲームの中で、自ずと普段とは違う身体の動かし方をすることを求められるので、徐々に身体感覚を活性化させることになる。また、難易度が上がるにつれて、ゴムひもがつくり出す線や面の連なりが、参加者の身体のスケールや動きを示すものとして立体的に浮かび上がってくるので、これを観察することで、自身の身体の特性を客観的に捉えることができる。
アスレチック(2回目)
2回目のアスレチックでは、くぐり抜けるルートの途中に椅子を設置し、その椅子に座るという日常的な所作を組み込んだうえで、入口から出口までスムーズにくぐり抜けられるよう繰り返し練習をおこなう。身体の動きが制限された特殊な環境下では、日常的な所作をおこなうために必要な身体の動かし方自体が異化され、参加者の身体感覚はさらなる刺激に晒されることになる。また、1回目と異なり、空間の形状自体は変化させず繰り返しくぐり抜けることになるため、環境の変化に意識的に対応するのではなく、必然的に環境を身体へ記憶させることになる。
最終的には、動きをスムーズにこなせるようになったタイミングで、舞台作品のような照明を当て、1人ずつ発表形式のデモンストレーションをおこない、一連の動きの中に、時として息をのむような美しさが宿る可能性があることを目の当たりにする。参加者はこれら2回のアスレチックを通じて、人間の身体が外部環境からの刺激に適応していくプロセスについて実感するとともに、そのプロセスを外部から観察するための方法論を学んでいく。