情報技術の進展によるトレーサビリティの向上は、私たちのイメージや行動にさまざまな影響を与えており、たとえば私たちが使用している携帯電話や定期券、ウェブサービスの使用履歴を分析すれば、個人の行動や嗜好を容易に浮かび上がらせることができます。
このワークショップでは、参加者がそれぞれビデオカメラを装着し、録画した状態で、ゲーム(缶蹴り)をおこない、終了後には、その録画した映像を用いてゲーム状況の分析/把握をおこないます。この一連の流れを通じて、複数の視点を統合して規模の大きな出来事を客観的に把握する方法や、履歴を分析して個人の行動パターンを類推する可能性について学習するとともに、情報化社会における創造性やそのリスクについて体感的に理解していきます。
ワークショップ概要
所要時間:4時間
参加人数:9名
対象年齢:小学校4年生〜一般
ワークショップの流れ
- ワークショップの説明
- ビデオカメラの説明――テストゲーム
- 缶蹴り(1回目)
- 記録された映像の分析――多視点とは何か?
- 缶蹴り(2回目)
- 記録された映像の分析――多視点から生まれる世界
- 振り返り
トピック
ビデオカメラ
参加者は小型のビデオカメラを専用のホルダーで胸元に固定し、録画をおこないながらゲーム(缶蹴り)をおこなう。このホルダーを使用することで、ビデオカメラがゲームのプレイの邪魔になることもなく、また録画された映像のブレも低減される。
ゲームが終了した後は、参加者からビデオカメラを回収し、それらをモニターに接続。縦3列×横3列に9分割されたモニターの画面に、それぞれのビデオカメラからの映像が、同一の時間軸上に同期して再生される。
缶蹴り
「缶蹴り」とは、1名の鬼が所有する缶を、鬼に見つからないように倒すゲームで、主に屋外でおこなわれる。鬼は常時、他のプレイヤーを捜索しており、鬼に見つかった場合、そのプレイヤーは「捕虜」となり、ゲームの続行が不可能になる(ただし、別のプレイヤーが缶を倒せば解放される)。
このように缶蹴りは、鬼とプレイヤーで行使できる権力/能力が異なっているうえに、ゲームをリセットできる機能があるため、かくれんぼや鬼ごっこなどの他のゲームに比べて、ゲームの戦略性や、状況の流動性が高く、鬼とプレーヤーがともにゲームの状況を客観的に把握しづらくなっている。
このワークショップでは、参加者から鬼を1名選び、残りの8名をプレーヤーとし、ビデオカメラを装着した状態で缶蹴りをおこなう。
記録された映像の分析
缶蹴り終了後に、ビデオカメラを回収し、先述のモニターで確認する。個々のビデオカメラの映像は主観的な映像だが、それが全員分集まり、同一時間軸上に展開されることで、プレイ時には分からなかった鬼とそれ以外のプレイヤー、あるいはプレイヤー同士の関係性がはっきりと浮かび上がる。参加者はこの関係性を分析することで、缶蹴りの戦略を立案するためのヒントを徐々に見つけ出していく。
参加者はこうしたプロセスを通じて、膨大な履歴などの個人情報を検索/分析することで個人の行動や嗜好を浮かび上がらせることができる、という今日のメディア環境の特徴を体験的に理解することができる。