日常生活であまり意識することのない自分自身の視線。他者と目が合った時に視線を逸らしたり、考え事をする時に上を見上げたり、インプット装置としての機能のほかにも、人間の心理状態を間接的に示すアウトプット装置としての側面を持っています。近年では、社会全体のユーザビリティに対する意識の向上や、コンピューターの小型化などの影響から、視線の動きを解析して、それをマーケティングや商品開発などに応用する事例が増えており、身近な存在でありながら、その注目度は高まっています。
このワークショップでは、そんな視線を可視化したうえで、人間心理との相関関係や、制御の難しさといった特性を浮き彫りにするいくつかのゲームをおこない、それを通じて視線を通じたコミュニケーションの可能性を学びます。
ワークショップ概要
所要時間:2時間
参加人数:10名
対象年齢:小学校4年生〜一般
ワークショップの流れ
- このワークショップの説明
- 視線と心理
- 視線入力技術の体験
- サイトシェアリング
- 視線とコミュニケーション
- アイビームゲーム
- 振り返り
トピック
The EyeWriter
「The EyeWriter」は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を発症したアーティストのテンプト・ワンを、再び絵が描けるようにするのために、彼の友人のアーティストやハッカーたちがスタートさせたプロジェクトで、低価格な視線入力システムを開発し、その制作方法やソースコードを無償で公開している。このワークショップでは、「The EyeWriter」のソフトウェアを独自に改良し、複数人数での同時利用を可能にした。
サイトシェアリング
「サイトシェアリング」では、参加者全員の視線の動きをコンピューターに取り込み、その上で、会場に設置された巨大スクリーンにさまざまな写真や画像を次々に投影していく。その時、参加者の視線がスクリーン上をどのように移動するのかを全員で共有しながら観測していく。
たとえば多数の国旗がグリッド上に配置されている画像を見せた場合、参加者の母国の国旗に自然と視線が集まったり、ファシリテーターが特定の国の名前を口にするだけで、その国の国旗に注目が集まったりする様が手に取るようにわかる。このような体験を通じて、どのような色や形状が視線を集めやすいのか、どのように視線を動かして対象を把握するのか、といった視線の特徴のほか、思考以前の無意識と視線の関係などを明らかにすると同時に、視線に潜む参加者ごとの個性のようなものも浮き彫りにする。
アイビームゲーム
「アイビームゲーム」では、会場にスモークを発生させ、2名の参加者の視線を文字通り「ビーム」のように立体的に可視化し、そのビームから逃げまわる鬼ごっこのようなゲームをおこなう。このゲームを通じて、視線は空間の中でどのように動いているのか、人間の視野の広さはどれくらいあるのか、といったことを理解していく。