他者と会話をする際のポジショニング、公共空間における場所取りは無意識的におこなっていると思いがちです。空間の一部を自己に付随する部分と捉える考え方(パーソナルスペース)や、3人組での会話の場面における空間構成の変化(F陣形)など、理論化されているものもあります。個と個の関係性に加え、周囲の環境の変化や、より多くの人数で構成される空間においては、私たちの身体はどのように振る舞い、空間を構成していこうとするのでしょうか。
このワークショップでは、2人組の会話を繰り返し行うことでパーソナルスペースの概念を体験します。次に3人組での会話を通して、2人での会話にもう1人が加わろうとする際の身体の動きの変化や、加わろうとする際の空間の変化について体験します。「教室をつくる」ユニットにおいては、「教室」という公共空間において、明度・音量等の周囲の環境の変化により、身体をどこに置くかがかわることがわkります。さらに「先生が小人だったら」という演劇風のシチュエーションを取り入れて、現実にはあり得ないけれど??教室をつくります。参加者各々が「学ぶ場」としての理想の教室をつくり発表します。コミュニケーションの場における空間構成のあり方について実践的なアプローチを学ぶことができます。
ワークショップ概要
人数:2〜3時間(120分〜180分)
参加人数:10名
対象年齢:小学生〜一般
ワークショップの流れ
- このワークショップの説明
- 2人での会話
- 3人での会話
- 教室での心地よい場所探し
- 設定を決めて教室をつくる
- 発表
- 自分の勉強してみたい教室をつくる
- 発表
- まとめ
トピック
パーソナルスペース
人間は他者との一定の物理的な距離をとります。この距離のことをパーソナスルスペースといい、他者が自分に近づいても不快ではない距離であり、目に見えない境界線とも捉えることができます。2者間でのパーソナルスペースを確認しあうワークをおこないます。互いに3m程度の間をあけて向き合い、一方(A)が歩いて、もう一方(B)に近づきます。待っている側(B)がこれ以上は近づかれたら不快だというところで立ち止まり床に目印をつけます。これをワークショップではBのパーソナルスペースとして認め、このワークをパートナーを変えながら繰り返します。このことによって、パーソナルスペースは2者の関係性、性別、身長等様々な要因が複雑に絡み合って構成されており、個人やペアになって異なることが明らかになります。私たちが生活している住居、公共空間などにおけるパーソナルスペースの在り方について考える契機となります。
モーションキャプチャーユニット
山口情報芸術センター[YCAM]の研究開発プロジェクト RAM の成果を元に開発された簡易的なモーションキャプチャーユニットを、教室をつくるためのプロトタイピング装置として活用しています。一般的な教室の大きさ8m×8mの大きさで床面に教室の図面をプロジェクションし、ヘルメット型のARマーカーを頭に取り付けて、活動している人の動きや、向いている方向をリアルタイムに可視化、記録することが可能になります。
現実世界との接続
例えば、日本の学校の教室の多くは教師が前に立ち、生徒が対面するように机を並べて座るというスタイルが一般的です。これは、教師が生徒に対して知識を教授するという教え方のスタイルが基本となっているためです。一方、海外の教室では、円形の大きな机を生徒全員で取り囲み活発に生徒同士のディスカッションを重視するスタイルや、教室の中にソファを配置し、安心感を与えるための空間設計を行なっているところもあります。働く場(オフィス)においても、イノベーションを誘発するための空間設計のために、可動性の高いオフィス用家具の開発がおこなわれています。反対に、オープンなスペースにおいてパーソナルスペースを確保するための遮音性の高い素材を利用した一人用の家具もあります。私たちの社会では、情報テクノロジーの進展により、直接会ってコミュニケーションを取ることの重要性、希少性が高まっています。その場においてより効果的なアプローチ考える際の手がかりとなります。