都市空間に周到に準備されたアトラクションを順序に従い体験するツアー・パフォーマンス形式の演劇作品。
舞台となる山口市中心商店街を、観客は3人一組のグループとなって20分間隔でスタートし、街の中に描かれた一本の筋を約90分で進んでいく。
物語は本番数日前から始まる。観客の手元に郵送されてくる「旅のしおり」に従いスタート地点へ。ここから、ある時はガイド役に導かれ、またある時はタクシーに乗り込んだり細い糸に導かれたりしながら、いわゆる普通の商店街を訪ね歩いていく。
物語は、様々な感覚が刺激されながら進行する。完全に暗転した漆黒の部屋で商店主たちのインタビューに耳をそばだてたかと思えば、地面に這わされた一本の細い糸を辿って狭い路地を歩かされる。古い和風スナックの裏手には屋上へとあがる階段が続き、そこからアーケード上の空中散歩。開放感とともに響き渡るのは、爆音で通過するSLのサウンド...。観客の移動速度の変化や、視野の集中と開放、聴覚の拡縮といった五感の刺激を受けて、感覚の拘束と開放が繰り返される。そして、ただの商店街であったはずの風景を眺める視点が揺さぶられていく。