会場内には檻状のケースに入れられたプロジェクターが3台設置されており、それらのレンズの前には扇風機の羽根のような素材が取り付けられている。この羽根が3台で同期して回転したり、あるいはランダムに回転することで、プロジェクター前方のスクリーンにフリッカーした映像が多重に映し出されていく。鑑賞者はこの映像効果によって、映し出された対象の持つ意味を徐々に引き剥がされたり、統合されたりする中で、知覚的快楽の渦中に囚われる。
この映像には、会場周辺を行き交う人々を捉えた風景や、生物の映像、過去の山口市の様子を収めた記録映像など、多彩な素材が利用されており、これらもプロジェクターの羽根と同様にコンピューターで制御されている。
フリッカーという過激な表現を用いながらも、独特の柔らかさを感じさせる本作には、ヒップホップやスケートボードなどのストリートカルチャーを彷彿とさせるザッピング感覚、および身体からアーキテクチャーへのボトムアップ的アプローチが見え隠れしている。