観客は人間に興味を持つAIによって、ある実験への参加を促されます。語りかけてくるAIに応える形で、観客同士コミュニケーションをとりながらミッションをこなしていくと、AIが観客の表情、言葉、身体の動きをカメラやマイクを通して検出、分析しようとします。そしてもしもAIが認識してしまうと、AIは観客に新しいコミュニケーションの方法を探すように促すのです。
現代社会はネットワークやAI技術の高度化などにより、私たちの日常がデータ化、分析され、その結果、個人に向けたAIからの「最適化した」アシストは身近になったといえます。この作品で観客は、AIに認識されないコミュニケーションの方法を他の観客とともに見つける必要性に迫られることで、人間とマシン(AI)の違いについて考えることになります。この作品はときに楽しく、またときにぎこちない体験を通して、AIにはない人間らしさとは何かを即興的に発明させる、AIによる人間の実験場ともいえます。
タイトルに込められているのは、当たり前だと思っている習慣や知識の一部を手放し、新たな学びを得るための空間を空けることの大切さです。普段の生活の中でAIとあまりに密接になった私たちに、人間性が優先されるAIやテクノロジーとはどのようなものであるべきかを問いかけます。