お金の代わりに無形の財産として貯まった「とくい」を運用する銀行では、「とくい」が引き出される際にそれを当事者以外も共有できるイベントが開催され、「とくい」のメディアとしての側面も大きな特徴となっている。
深澤孝史が茨城県の取手市の団地で行っていたプロジェクトを元に、商店街という不特定多数が利用する場に開かれた形で実現させた試みは、予想を大きく上回る反響を呼び、会場は地域住民を中心に賑わう公民館のような場所となった。また、人々が本来の職業や世代などを超えて「とくい」でつながるという、新たなコミュニティを創出した。YCAM10周年記念祭の第一期と第二期の間もボランティアにより運営されるなど、地域住民による自発的な関わりが、作家自身も予想していなかったさまざまな副産物を生みだし、そのことが更に新たなコミュニケーションを誘発するという、あらゆる人を巻き込んでこれまでにない活動体としての発展を遂げたプロジェクトとなった。