主人公は、東京で暮らすひと組のカップル。彼らは、心から満たされた人生を送りたいと思いつつも、そこに辿り着くことができない現実に困難を感じている。ありふれた日常の中、今現在を生きることに不自由ないにも関わらず、常に感じ続ける閉塞感。その理由を見つけるために、彼らは、自分に起こりえた、そして、起こるかもしれない、別の選択肢を想像する。
本作に登場する主人公の「ここではないどこか、別の人生があるとしたら」という想像と、その深層にある不安感やどうしようもなさは、現代に生きる私たちの感覚の断片とも言える。そんな誰しもが抱く感情が、作品を通じて観客の中に降り積もり、ひとつの「演劇」が生み出される。