演出に映像を多用しており、随所にあらかじめ制作されたアニメーションや実写映像のほか、ダンサーの動きをもとにリアルタイムに生成した映像などを舞台背景のスクリーンに投影している。とくに独自の手法で撮影された、大小様々なサイズのダンサーが登場する実写映像は、舞台上で展開する実際のダンスと融合することで、観客の遠近感やスケール感を揺さぶり、日常から冒険への飛躍を巧みに演出している。このほか、先駆的な試みとしてプロジェクションマッピングの技術を応用し、舞台上の舞台装置などに、その形状に合わせた映像を投影。映像による空間的な演出も施している。
このようにメディアテクノロジーを積極的に取り入れた作品でありながら、その重厚なシステムではなく、ユーモアや親しみやすさが前景化する本作は、これまで数多くのアプローチが試行されてきた〈メディアテクノロジー+身体表現〉に新たな地平を切り開くものとなっている。