観客は開館中の図書館で、2人一組で席につき、それぞれのヘッドフォンから聞こえてくる「ささやき声」に導かれながら、目の前に積まれた本から本へと文字を辿っていく。そして、自分がいる図書館という場所から本の世界へ、また現実の図書館へと旅をする。目の前の本をめくることで、本を読むこと、図書館で過ごすことという何気ない経験に、驚きと奥深さが与えられる。
オートテアトロ
「オートテアトロ(自動演劇)」は、観客自身が作品を上演する、という実験的なスタイルの演劇。アント・ハンプトンはこれまでにオートテアトロを継続的に手がけており、本作もそのひとつである。多くの場合は、観客が演じる内容や台詞が、音声や視覚的なもの、または文字で指示される。それらの指示に従っているだけで、俳優が登場しなくても、さらには劇場に行かなくても、体験している観客の中には「演劇らしきもの」が発生してくる、 その不思議な感覚が魅力である。