カイル・マクドナルドが開発した3Dスキャニングのためのオープンソース・ソフトウェア「DIY 3D Scanning」(2009)を応用した本作では、顔の3次元計測データの処理により、映像が生成される仕組みになっている。
観客がブースの椅子に座ると、照明の投射とともに、顔の輪郭がスキャニングされ、自らの表情が正面のスクリーンに立体的に浮かび上がる。その映像は、コンピュータに保存されたデータと合成され、年齢や性別の異なる他者の表情を含む新たな姿へと移り変わる。タイトルにある「ヤヌス」とは、ローマ神話に出てくる前後2つの顔をもつ守護神のことを示し、行く/帰る、過去/未来、若さ/老いといった、移り変わりやデュアリティ(二項性)の意を含む。古代の神話やメタファーに新たな解釈を与えるかのように、本作は、自己と他者、過去と未来の境界を映し出す。
観客と別の人物の表情が合成された立体的な顔の映像が変化しながら現れては消えていく映像インスタレーション。