公演をおこなう地域の特徴的な光景をいくつか選定し、その光景を舞台空間上に〈色〉で再現する。様々な色で覆われた空間の中で、5名のダンサーたちはその変容に呼応するかたちで、コンタクト・インプロビゼーションをベースにしたアクロバティックかつ繊細なダンスを展開する。
また舞台上を流れる音響には、照明と同様に、公演をおこなう地域にある〈音〉を録音し、使用しており、公演のたびにその様相は大きく変化する。このように、公演先の光と音を取り込み、変化を続けることで、人が日々の生活の中で知識や経験をたくわえていくのと同じようなプロセスを作品自体が辿っていくことになる。
モビリティ(機動性)
ダンスという表現は、光源と身体と動くための空間があれば作品が成立する可能性がある制約の少ない表現であり、それはモビリティの高い表現とも言い換えることができる。本作では、ダンスの演出に、可搬性に優れ、多様なメディアを扱うことのできるコンピューターとあらゆる色を瞬時に再現できるフルカラーLED照明を導入することで、モビリティを損なうこと無く、多層的なダンス作品を生み出すことに成功している。このことは、公演先の色と音を取り込むという本作の制作スタイルをより先鋭化させている。