服飾品の無料レンタルだけでなく、洗濯やお直しができるスペースも設けられ、服飾品という身近なメディアを通したコミュニケーションを生み出すことを企図している。ナイロビのマーケットから着想を得たプロジェクトである。
西尾美也はこれまでも装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目し、衣服に関するアートプロジェクトを発表してきたが、このプロジェクトは衣服の実用性に重きを置いた初めての試みである。大量の衣服が掛けられた大きな「服の壁」をアイコンとして、本展示は山口の商店街の風景に新鮮なインパクトを与えた。YCAM10周年記念祭の第二期では形を変え、「その場所にかつてあった記憶を古着で再構築する」というそれまでに西尾が取り組んできた『オーバーオール』シリーズの一環として、集まった古着でその場所に以前存在していた「服の家」を施工。「装い」に対してファッション性やアート性、そして実用性や社会性といったさまざまなアプローチで取り組んだこのプロジェクトは、その後アーツ前橋での「ファッションの図書館」や六本木アートナイトでの大規模なインスタレーションに発展していった。