ベルリンテレビ塔の最上階にあるレストランは、フロア全体が水平方向にゆっくりと回転し続けており、訪れた人々は食事を楽しみながらベルリン市街全体を一望することができる。このレストランはオープン以来、1時間で1回の速度で回転していたが、ドイツ統一後は改修により30分に1回の速度にスピードアップした。その背景には、資本主義経済の導入に伴う、営業の高効率化への圧力があったと言われている。
この作品では、レストランが1回転する30分間に渡って、レストランの内部から窓際にいる市民や観光客を撮影。その映像を半分の速度、つまり1時間に引き伸ばすことで、東ドイツ時代の回転速度を再現している。また、映像に映し出される被写体のゆっくりとした動きを通じて、社会全体がスピードアップしてしまった今日の東ドイツの姿を浮き彫りにし、かつての東ドイツに対する一種の郷愁へと誘う。
ベルリンテレビ塔
ベルリンのアレクサンダー広場にあるテレビ塔。現在の高さは368メートル。
1969年、旧東ドイツの建国20周年記念日に完成して以来、ベルリン中の家庭にテレビ放送用電波を発信し続けているとともに、ベルリンを代表するランドマークとして、統一後の現在に至るまで人々に親しまれている。この作品の制作後、レストランフロアの回転速度はさらに上がり、現在では20分に1回の速度で回転している。