取材はごく一般的な商店や飲食店、路上で出会った地元の人々に対しておこなわれ、県内の40ヶ所以上で実施。このときの「取材」とは、いわゆるジャーナリストのインタビューのようなものではなく、あいさつなど日常的なやりとりから「どこ産の素材を使っていますか?」「検査はされてますか?」といった疑問を、客(消費者/生活者)が売り手に素朴に質問してみるというものである。最終的には14ヶ所のシーンを選び、現場で交わされた会話をセリフとして書き起こした後、取材をおこなったパフォーマー自身がそのやりとりを舞台上で再現した模様を映像作品としている。
ノンフィクションとフィクション、そして、本作の出演者が聞き手でありながら、問いを突きつけられる当事者も演じる、という複数の二重性を孕む本作を通じて、汚染や原発についての人々の複雑な反応や、人々に規範的な振る舞いをさせてしまう「空気」の存在、さらにはイデオロギーによって広がってしまった人間関係の断絶を浮かび上がらせる。