作品に使用している映像フッテージは、2016年6月に空族、スタジオ石、YCAMの混成スタッフで再度現地に赴き、展示用に撮り下ろしたものである。その際に訪れた主要な都市は、バンコク(タイ)、ノンカーイ(タイ)、ヴァンヴィエン(ラオス)、ロンチェン(ラオス)など、長期に渡る現地滞在によって映画の脚本を制作した空族に大きな影響を与えた場所である。特にロンチェンは『バンコクナイツ』の撮影時にも訪れることのできなかった場所であり、映画本編では直接描かれてはいないものの、主人公が大きな影響を受ける場所として設定されており、この展示における核心の一つとなっている。
また、本作は、タイからラオスおよび東南アジアを俯瞰した視点をも打ち出している。映像の中に登場する主要な都市の風景を通じて、ベトナム戦争を主とする東南アジア近現代の戦争の痕跡、さらにそこに上書きされる急速な近代都市化、観光資本化など、映画本編では直接描かれなかった土地の背景を明らかにしていく。