8つのラウドスピーカー、2つのウーファー、さらに客席の足元に8つの小さなスピーカーが配置された空間内において、フィールドレーコディングされた音源、日野により作曲された電子音源、ドラム、管楽器、チェロ、制御基盤とアクチュエータを有した自動演奏楽器による生演奏と照明装置が、タイムライン上で特定のルールによって進行するという音響構造を持っている。
日野は制作に当たって寄せたアーティストステートメントの中で、「それぞれの音には秩序があり、他の存在と影響しあっていく、そういった音空間を作り出すことを試してみたい」と記している。本作においてもそれを裏付けるように、劇場空間の中に同時に存在する複数の音響的要素が、それぞれに協調しつつ、互いの自由を侵犯しない均衡を保ちながら展開される、多層的な音楽表現が試みられている。
それぞれの音の発生源が直接的に把握できないように設計された不可視な音源を鑑賞者に傾聴してもらう事で、自然環境下で起こる事象に包みこまれるような、そしてそのリズムに自身も同期をする感覚を鑑賞者に与えることになる。