坂本龍一は東日本大震災以降、〈人類が生きる環境〉を支える森林へと意識を向けるべく、樹木が発する微弱な生体電位を元に楽曲を制作するというプロジェクトを構想していた。YCAM InterLabでは、この構想のために、樹木が発する生体電位だけでなく、樹木の周りの環境の変化が樹木の生体電位に与える影響までも考慮するための温度や湿度、照度、気圧を計測するためのデバイスを開発。世界各地のアートセンターや研究機関にデータ収集を呼びかけた。
展覧会の会期中、世界各地の樹木の生体電位、並びに周囲の環境データが日々インターネットを利用し展覧会場へと送信され、それらのデータは坂本のディレクションよって構築されたアルゴリズムを通して音楽へと変換され、会場で奏でられる。また、センサーデバイスが設置された環境の情報をビジュアライズした映像が、会場を包み込むサウンドスケープと統合され、季節や天候に応じて変化を続ける〈森のような空間〉が出現する。
森が奏でる交響曲
樹木が発する微弱な生体電位をもとに生成したサウンドを用いたインスタレーション。