この建築体を構成する結節点は、それぞれが一種の知覚を持った主観的視点となっており、結節点同士の関係性や、環境情報を分析しながら、移動/消滅/複製をおこなう。このようなプロセスを各結節点が絶えず繰り返す、タイトルにも含まれる「Corpora」というキーワードが象徴的に表す「自律生成による総体」という状態をつくり出していく。本展では、こうして生み出される建築体の全体像をインタラクティブに体験するインスタレーション、建築体の一部を物質化したオブジェを展示したほか、館内各所にディスプレイを設置し、その場所から見える建築体のリアルタイムの様子を、現実の風景とオーバーラップするかたちで表示した。
究極の主観的視点「スーパーアイ」
doubleNegatives Architectureが提唱する独自の空間表記方法で、自己の視点を起点に対象物との方向と距離を表記する。本作では、各結節点がこの表記法に基づいて、自身と周辺の結節点との関係性(過密/過疎、自立可能性など)を常に判定している。
センサー
温度、湿度、照度、音声のレベルなどを感知する小型センサーユニット約30個をYCAM前方の中央公園全体に、そして風向風速計をYCAM屋上に設置。これらが無線アドホック通信をおこなうことでメッシュネットワークを形成し、YCAM周辺の環境情報をコンピューターに送信している。各結節点は、センサーから収集されたデータをもとに、その状態を変化させていく。
インスタレーション
会場に設置された巨大スクリーンには、「スーパーアイ」に基づいて表記されたこの建築体の図面や、AR技術によって建築体の外観を実風景にオーバーラップした映像が投影されており、観客はこの映像を通じて、局所的視点と総体的視点を往来する状態を体感することができる。また会場では、結節点の変化に応じてサウンドが発生しており、あたかも建築体の内部にいるかのような感覚を想起させる。
オブジェ
ホワイエでは、あるタイミングでの建築体の一部のデータを切り出し、アルミと鉄で再現したオブジェを展示した。この作品を通じて建築体が作り出す空間がどのような直感を与え、またどのような影響を与えるかをヒューマンスケールで体験することができる。