作品の構成
RASS: Roam Across Sphere System [ぶらぶらする音]
会場/大階段
大階段に配置された3×4=12 個のスピーカーから流れてくるのは、2種類の音である。階段で人が動くとその位置と動きに反応して一方の音は大きくなり、もう一方の音は小さくなる。幅の広い大きな階段というのは単に上り下りのための通路ではなく、斜めに上ったり下がったり、左右に移動したりもできる、立体的な空間である。階段の中で動き回ったり、腕を大きく振り上げたりしながら、変化する音に耳を澄ませてみると、音の動きがわかりやすい。
FIOS: Fade In Out System [かくれる音]
会場/公園側エントランス小階段
この作品は、3つのスピーカーから常に音が流れている。まるで草むらに隠れている虫のように、人が近づくと静かに鳴り止んでしまうが、しばらくするとまた鳴りだす。縦方向に空間を移動しながら、音の聞こえ方の変化を能動的に感じられるところが特徴的な作品である。この作品の周辺では、人が通ったあと、しばらく音が静かになるので、数十秒前にここを通過した人の痕跡を感じ取ることが出来るかもしれない。
CAGS: Catch And Go Systems [つかまえる音]
会場/ロッカー前通路
この作品には、一直線に並べた5 つのスピーカーと、6 本のマイクが使われている。マイクに入った音(サウンド)は、DTCS( スタジオA とホワイエの間の中庭)の音と混ざり合って、一瞬であなたの元にあつまり、すぐさまスピーカーを移動して逃げていく。館内でも人通りの多いこの通路で「人が水平方向へ直線的に移動していく」ことを意識させる作品となっている。
DTCS: Diffuse The Converged Sound [配られる音]
会場/中庭(スタジオA側)
スタジオA 側の中庭は、autonomic sound sphere 全体のベースとなる音に対して、屋外の環境音を取り込む役割がある。この場所で録音された音は、コンピュータによって全体を循環する流動的な音と合成されて、大階段の「RASS」、通路の「CAGS」、小階段の「FIOS」というそれぞれの作品へと受け渡されていく。たとえば、この場所に仕掛けられたマイクに声を吹き込むと、館内各所の作品にその声が紛れ込んでいく。
CTDS: Converge The Diffused Sound [集まった音]
会場/中庭(インフォメーション前)
CAGS 横の中庭は、大階段の「RASS」、通路の「CAGS」、小階段の「FIOS」というそれぞれの作品で生成され送られてきた3つの音が、合成された音として聞くことが出来る。また同時に録音も行なっていて、3つのサウンドファイル(コンピュータ内での音のファイル)にこの場所特有の音を合成して、屋外の環境音と共にDTCS(スタジオA 側)へと送る。