YCAMの正面に位置する中央公園の周囲には、強力なサーチライトが合計20台設置されており、携帯電話やウェブサイト、世界28ヶ所のアートセンターに設置された専用端末から送信されたメッセージに応じて、移動しながら明滅していく。この光は、特設ウェブサイトを訪れた誰かがメッセージを受信し、閲覧するまで上空を浮遊し続ける。メッセージは同時に10個まで処理することが可能で、多数の人々がこの作品にアクセスすることで、YCAMの上空に、複数の光線が複雑に絡み合った巨大な構造体が出現する。そして、この〈光の網の目〉とも言うべき構造体は、実体を持たない非物質的な屋根として、山口の山並みと、光や音が振動しながら伝達していく様をモチーフにしたYCAMの外観を拡張する。
サーチライト
この作品では、14万ワットのサーチライトが使用されており、そのひとつひとつがコンピューターによって点灯と方向を制御することができる。このサーチライトがつくり出す巨大な〈光の網の目〉は、YCAMから15キロメートル離れた地点からも見ることができる。
サーチライトの点滅
送信されたメッセージは、日本語なら毎秒2文字、アルファベットなら毎秒4文字という、電子的なコミュニケーションとしては非常に緩やかな速度でコード化され、それに基づいてサーチライトが点滅していく。このとき、別のサーチライトからも同時に光が放たれ、交差するようになっており、メッセージが古くなればなるほど、交差するポイントの高度が上昇する。
メッセージ
参加者はこの作品を通じて、特定の人物はもちろん、不特定多数の人々に対してもメッセージを送ることができる。特定の人物に対してメッセージを送った場合、作品のサーバーから対象者に向けて「あなた宛のメッセージが山口の上空を浮遊している」といった旨のメールが送信され、ウェブサイト上で参加者からのメッセージを閲覧することを促される。またこの作品では、メッセージを日英間で自動翻訳しているため、メッセージの本来の意図から少し離れ、常に拙くもどこか魅力的なものとして伝達される。そこには急速な勢いで進展するグローバル化へのささやかな皮肉がこめられている。
ウェブサイト
ウェブサイトには、メッセージを送信したり、閲覧したりするためのインターフェースが用意されているほか、YCAMの上空を飛び交う光の状態をシミュレーションした3DCG映像が表示されている。このほかYCAMを眺めることができる市内の8ヶ所に設置したビデオカメラからの映像が中継されている。
アクセスポッド
世界15ヶ国28ヶ所のアートセンター、メディアセンター、博物館に、この作品にアクセスするための専用端末として「アクセスポッド」を設置。この作品を通じて、アート、サイエンス、メディアテクノロジーを専門とするセンター間の新たな連携を生み出した。
- MACBA, Museu d'Art Contemporani de Barcelona(バルセロナ)
- MARS Lab Fraunhofer Institut für Medienkommunikation(ボン)
- C3 Center for Culture and Communication(ブタペスト)
- Fundación Telefónica(ブエノスアイレス)
- MIT MediaLab(ケンブリッジ)
- KHM, Kunsthochschule für Medien, Köln(ケルン)
- Bauhaus(デッサウ)
- 岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS](岐阜)
- ZKM, Zentrum für Kunst und Medientechnologie(カールスルーエ)
- 京都芸術センター(京都)
- FACT Film, Art and Creative Technology(リヴァプール)
- Science Museum(ロンドン)
- Ojo Atómico(マドリッド)
- Laboratorio Arte Alameda(メキシコシティ)
- SAT, Société des Arts Technologiques(モントリオール)
- Sarai(ニューデリー)
- Eyebeam(ニューヨーク)
- Wood Street Galleries(ピッツバーグ)
- V2_Organisatie(ロッテルダム)
- Itaú cultural(サンパウロ)
- せんだいメディアテーク(仙台)
- Art Center Nabi(ソウル)
- NTTインターコミュニケーション・センター [ICC](東京)
- 日本科学未来館(東京)
- Ontario Science Centre(トロント)
- Emily Carr Institute of Art and Design(ヴァンクーヴァー)
- WROCenter(ワルシャワ)
- Multimedia Institute(ザブレブ)